【272】 ◎ 島 秀之助 『プロ野球審判の眼 (1986/09 岩波新書) ★★★★☆

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プロ野球審判歴40余年の回想。味わい深く、楽しめた1冊。

プロ野球審判の眼3050.JPGプロ野球審判の眼.jpg    島秀之助.jpg 島秀之助(1908-1995)
プロ野球審判の眼』 岩波新書 〔86年〕

 プロ野球審判歴40余年に渡った島秀之助(1908-1995)が78歳で記した回想録で、淡々とした語り口は味わい深く、試合の様々な逸話は読み物としても面白いものです。

 著者は1936(昭和11)年の日本プロ野球発足時に選手としてスタート、その後審判に転じ、1950(昭和25)年から31年間はセリーグ審判部長でした。本書を読むと審判という仕事の大変さがよくわかります。こんな名審判にもメンターとでもいうべき人がいて、その人がまさに "俺がルールブックだ"みたいな人物で面白い。

1942(昭和17)年の名古屋-大洋戦延長28回引き分け.jpg 著者は初の日本シリーズや初の天覧試合の審判もしていますが、日本最多イニング試合の審判をした話がスゴイ。1942(昭和17)年の名古屋-大洋戦で、延長28回引き分けだったそうですが、大リーグでもこれを超える記録はありません。しかもその試合が"トリプル・ヘッダー"の第3試合だったというから、想像を絶する!(試合時間が3時間47分と"短い"のも意外。テンポいい試合だった?)。こうしたトリビアルなデータは、今はウェッブサイトなどでも見ることができますが、当事者の証言として語られているところがいいと思いました。

 本書後半は、「こんなプレーの判定は?」という100問100答になっていて、あたりそこねのゴロを犬がくわえて走り出した場合どうなるのかといった話から、インフィールドフライを故意落球した場合の扱いは?といった話まで書かれていて、こちらも楽しい内容です。インフィールドフライは、「インフィールドフライ」の宣告があった時点で(野手が落球しても)打者はアウトですが、ボールインプレイ(ボールデッドとはならない)、ただし打者アウトのためフォースプレイは成立しないとのこと。

 本書刊行後も、'91年に広島の達川捕手が大洋戦で、走者満塁でインフィールドフライを故意落球し、本塁を踏んで1塁送球して相手チームをダブルプレーに仕留めたつもりで、結果として自チームがサヨナラ負けを喫した「サヨナラインフィールドフライ事件」というのを起こしています(このとき相手チームの3塁走者もルールを理解しておらず、ベンチに戻る際にたまたま無意識に本塁ベースを踏んだのが決勝点になった)。より最近では、'06年8月の巨人-広島戦では、広島の内野手がインフィールドフライを見失って落球したのですが、巨人の打者走者や塁上のランナーは、一瞬どうすればいいのか混乱した(もちろん広島の選手たちも、さらに審判たちも)ということがありました。ルールとしてわかっていても、めったにないことがたまたま起きると、その次にどうすればいいのか一瞬わからなくなるものなのだなあと。(2015年5月4日の巨人-広島戦では、逆に広島が"サヨナラインフィールドフライ"勝利を収めた。達川捕手以来の教訓が生きた?)

2012年7月12日 神奈川大会1回戦日大藤沢vs武相 、2対2同点9回裏1死満塁の場面で打者は内野フライインフィールドフライ宣告。捕球後に武相野手陣が審判によるタイムのコールが無いことを確認せずマウンド付近へ。それに気付いた日大藤沢3塁走者が隙を突いてサヨナラのホームイン(記録上は本盗)


《読書MEMO》
2015年5月4日広島カープ サヨナラインフィールドフライ

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