【014】 ○ 城 繁幸 『内側から見た富士通-「成果主義」の崩壊』 (2004/07 光文社ペーパーバックス) ★★★★

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暴露本!? 結果として、「成果主義」導入の際の留意点を指摘している。

内側から見た富士通  城 繁幸.jpg内側.jpg   special0502070103.jpg 城繁幸氏
内側から見た富士通「成果主義」の崩壊』光文社ペーパーバックス〔'04年〕

014.gif 元富士通の人事部社員の手によるもので暴露本という見方もできますが、「成果主義」の導入に伴う様々な問題点を具体的に指摘していて参考になりました。著者自身は「成果主義」を否定しているのではなく(冒頭にはそのメリットが述べられている)、ただそれが富士通の中ではうまくいかなかったと...。

 その原因は、ムラ社会的な企業風土の問題であったり、評価制度などシステムの問題であったり、管理職や人事部の問題であったりするのですが、何れも富士通に限らず普通の会社でもありそうなことなので、やや義憤にかられた記述が見られるものの(その部分がドキュメンタリーとして「あの富士通が...」という感じで読者の関心をそそる部分もあるのかも知れませんが)、結果として、一般の企業が「成果主義」を導入する際の留意点を示すことにもなっています。

 システムの問題に目をやると、評価制度は、相対評価からスタートしたためにどれだけ頑張った人がいても、部門や評価者に力がなければ好評価にはつながらないと(本社人事部は全員A評価)。そこで絶対評価に変えると、今度は評価のインフレを招いてしまったと。
 
 企画型裁量労働制は、本人に適用の拒否権があるわけですが、仕事量が多い社員は企画型裁量労働の適用を拒否し、従来どおり時間単価で支払われる方を選び、仕事の少ない人の方が適用を受諾したなどのことがあり、かえって人件費増につながったと。
 
 そのほかにも「成果主義」でありながら「降格制度」が無かったとか、人事部が目標シートをチェックしないで有給休暇の取得状況で評価修正していたとか、様々な問題点の指摘があります。 
 人事部が全員の目標シートをチェックするのは大企業では無理ではないかという気もします。ただし、休暇取得の多い社員の方の評価を下げるというのは論外でしょう。

 巻末には成果主義に対する提案もあり、著者は、目標管理制度の廃止や「公正評価委員会の設置」を訴えています。 
 裁量労働制については、それ以外の勤務制度との併存をやめるべきだと言っていますが、同感です。 
 ただし、現行法規下においては、"併存"を避けることが困難なケースの方が多いのではないかと思われます。

《読書MEMO》
●目標シートの達成度は人事ではノーチェック(これはいたしかたない?)、チェックするのは残業時間・年休・勤怠、「残業30時間なのにAはないでしょう」(これはひどい)(55p)
●F2成果主義の最大の欠陥は「降格制度」が存在しないこと(あっても機能しないのでは)(83p)
●有給休暇の取得が少ないこと、暗黙の定時(22時)までいることなどで評価(130p)
●目標管理をやめ、成果のみで評価を決めればいい(200p)
●完全裁量労働制にすべし、時間外手当がつく社員と混在させるな(賛成)(207p)

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