【1626】 ○ NHKスペシャル取材班 『グーグル革命の衝撃 (2009/08 新潮文庫) ★★★★

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一企業に膨大な個人情報が蓄積されることの不安。「検索」の次に何をしようとしているのか。

グーグル革命の衝撃 新潮文庫.jpg 『グーグル革命の衝撃 (新潮文庫)』  グーグル革命の衝撃 NHK.jpg 「NHKスペシャル"グーグル革命の衝撃"あなたの人生を検索が変える [DVD]

 NHKスペシャルで'07年1月21日に放映された「"グーグル革命"の衝撃~あなたの人生を"検索"が変える」は、思えばそれが自分にとって"Web2.0"的な世界を初めて認識した機会だったかも知れません。
 番組の内容はその年の5月に単行本化されましたが、本書はその後のグーグルとそれを取り巻く世界の動向を加筆し、2年の月日を経て文庫化したもので、単行本の方は読んでなかったこともあり、久しぶりにグーグルという企業の"凄さ"が自分の中で甦ってきました。

 まず、冒頭の広報チームの構成からして凄く、ハーバード・ロー・スクールの出身者であったりします。そして、番組にもあった、難解な数学の問題だけを表示した高速道路脇にあるグーグルの求人広告。優秀な人材を根こそぎ採用していて、普通の会社に1人か2人しかいないようなスーパースターが、グーグルにはごろごろいるとのことです。

 グーグルの検索結果の表示順位のアルゴリズムは明かされていませんが、本書では、グーグルの草創期の物語を通して、サイトのバックリンクの多さなど、その基本的な指標は明かされているように思います。

 グーグルの収入源である"グーグル・アドワーズ"、コンピュータがニュースを編集する"グーグル・ニュース"についても1章ずつ割いて解説されていますが、検索順位を上げることだけを目的としたリンクなどに対して、グーグルがどのように対処しているのかという話が、やはり興味深かったです。

 企業のグーグルでの検索順位を上げるためのコンサルティング会社の隆盛を番組で見た時は驚きましたが、今では「SEO対策」などといった言葉が日本でも身近なものになっています(アドワーズの代理店から、広告掲載を勧誘された経験を持つ人も多いのでは)。

 ここで本書が問題提起しているのは、情報収集の全てをグーグルに依存し、また、グーグルに個人情報の全てを委ねるようなライフスタイルが新たに現出しようとしていることです。

 本書で紹介されているサンフランコ市の例のように、グーグルが接続業者と組めば、そして、その接続業者が都市全体を無線LANでカバーするアクセスポイントを有していれば、グーグルには間接的に市民の個人生活情報が蓄積されることになり、これは、自治体や国家以上の情報を、それもナマの情報を、一企業が蓄積していることになるということではないかと。
 また、そうした情報は、マーケティング的立場から見れば関係者にとっては垂涎の的であり、これは結構危険な状態なのではないかと思いました。

 '06年のユーチューブの買収発表後も、最近では中国市場からの撤退表明やオンラインビデオサービス会社の買収など、依然話題に事欠かないグーグルですが、この企業が「検索サービス」の次に何をしようとしているのかということは、我々の生活にも影響が無いとは言えない気が、本書を読んでしました。

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