【831】 ○ エドワード・M・ハロウェル/ジョン・J・レイティー 『へんてこな贈り物ー誤解されやすいあなたにー注意欠陥・多動性障害とのつきあい方』 (1998/12 中央法規出版) ★★★★ (○ サリ・ソルデン 『片づけられない女たち (2000/05 WAVE出版) ★★★☆)

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多動のないADD(注意欠陥優勢型)にウェイトを置いて書かれた本2冊。

へんてこな贈り物.jpg 『へんてこな贈り物―誤解されやすいあなたに片づけられない女たち.jpg 『片づけられない女たち

 米国精神医学会の診断・統計マニュアル「DSM ‐Ⅲ」で「注意欠陥障害」(ADD)が定義されたのが'80年、その改訂版「DSM‐ⅢR」('87年)でADDは「注意欠陥・多動障害」(ADHD)と改められ、多動を伴わない注意欠陥障害は「分類不能の注意欠陥障害」とされましたが、「DSM‐Ⅳ」('94年)で、ADDのすべてのタイプはAD/HD(注意欠陥/多動性障害)に一元化され、多動のないADDは「注意欠陥/多動性障害・不注意優勢型」に位置づけられました。

 こうしたややこしい経緯を辿ったのは、多動性症候群が早くから認知されていたのに対し、「注意欠陥」というものが症状として認知されるのが遅かったためだと思われます。
 2人の医学博士による『へんてこな贈り物』(原題"Driven to Distraction ")の刊行は'94年、書かれたのは「DSM‐Ⅳ」刊行の直前頃だと思われますが、本書では、多動症状のある人、無い人を含めてADDという表現を用いていて、内容的には「注意欠陥」の方にウェイトが置かれています。

 著者の1人ハロウェル博士(米国)自身が、自らがADDであることに気づいたのが31歳の時で、その後彼はADDの専門医としての道を歩むことになりますが(この経歴は本書を翻訳した司馬理英子氏とよく似ている)、本書では、心理学者としての20年とその内のADD専門医としての10年のキャリアをベースに、ADDとは何か、子供のADD、大人のADD、夫婦や家族のADDについての対処の仕方と、薬物治療を含めた総括的な治療法が書かれています。

 ハロウェル博士は、ADDは多くの問題を引き起こしうるが、エネルギー・直感力・創造性・情熱という強みもあるとしています。
 また、正しい診断を受けることの重要性も説いていて、これは、同じく多動の無いADDについて書かれたサリ・ソルデン女史(米国)の『片づけられない女たち(Women With Attention Deficit Disorder)』('95年原著出版、'00年/ニキ・リンコ訳、WAVE出版)でも強調されていました。
 短期記憶に弱点のあるADDの人は、部屋が片づかずにトッ散らかってしまうことがあるのですが、周囲からは単にだらしの無い人と見られ、ADDであることに自分さえも気づかず悩むことが多いということです。

 両著とも成功体験の重要性を説いていて、それには周囲の理解と助けも必要なのですが、自己の特質に向き合い自分をコントロールできるようになれば、消極性が取り除かれ、その人の人生が良い意味で違ったものになってくるとしています。

 『へんてこな贈り物』の方がADDの人に対する周囲の人たちの対処・アドバイスの仕方中心、『片づけられない女たち』の方が、ADDの人(またはADDである可能性がある人)自身に対するセルフカウンセリング的・啓蒙的な内容となっています。

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