【396】 ◎ 司馬 理英子 『のび太・ジャイアン症候群〈2〉―ADHD これで子どもが変わる』 (1999/02 主婦の友社) ★★★★☆

「●LD・ADHD」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【832】 M・ファウラー 『手のつけられない子 それはADHDのせいだった

ADHDをわかりやすく解説。学級崩壊に悩む教師にも読んで欲しい。

のび太・ジャイアン症候群〈2.jpg 『のび太・ジャイアン症候群〈2〉―ADHD これで子どもが変わる』 (1999/02 主婦の友社)

 前著『のび太・ジャイアン症候群』('97年)は、注意欠陥・多動性障害(ADHD=Attention-Deficit Hyperactivity Disorder)のうち注意欠陥が顕著なタイプを「のび太型」(集中力・忍耐力に乏しく、不注意、過敏で傷つきやすい)、多動性が顕著なタイプを「ジャイアン型」(衝動的で、落ち着きがなく、感情の起伏が激しい)とし、教室によくいるいじめっ子といじめられっ子が、実は同根の障害である可能性があることを示唆したものでした。

 そのわかりやすい説明から多くの読者を得た本でしたが、それだけそうした特質を備えた子どもを持ちながらも原因がわからず悩んでいた親が多かったということでしょうか。
 行為障害の子どもが引き起こすイジメは故意であるけれど、ADHDの場合、わざとではなく結果的に人を傷つけてしまうという点が特徴であり、誤解されやすい。
 またADHDの原因は遺伝性の脳機能障害であると考えられていて、原因がわからないままにそれを、家庭でのしつけが悪かったせいなのかと思い込んでいた親も多かったようです。

 本書では、実際に日本の幼稚園や小学校においてそうした子どもがかなりいると考えられることをデータにより示すとともに、治療の実際(カウンセリングなど家族も含めてケアする一方で、薬が有効な場合は積極的に薬を処方するというのが著者の考え)や、前著で触れていた親として、あるいは教師としての対処方法などをさらに詳しく述べるとともに、親の学校に対する対処の仕方などにも触れています。

 著者はもともと実験病理学者で、米国で子育てしているうちに日米の子育てに対する考え方の違いを実感するとともに、自分(!)と自分の子どもが注意欠陥・多動性障害(ADHD)であることを認識し、今はADHD専門のクリニックを開いている医師です。

 このシリーズは、本書以降も、外見的症状の似たアスペルガー症候群について解説したものや、家族のADHD・大人のADHDにウェイトを置いたものなどが出されていますが、本書と『のび太・ジャイアン症候群〈3〉-ADHD子どもが輝く親と教師の接し方』('03年)は、一部の児童が授業中に徘徊することなどが原因で学級全体が落ち着いて授業できる雰囲気にないような、そのようなタイプの学級崩壊で悩んでいる教師に、特に読んで欲しい内容だと感じました。

About this Entry

This page contains a single entry by wada published on 2006年9月 2日 10:34.

【395】 ○ 稲沢 潤子 『LD(学習障害)の子どもたち―障害を知る本⑧』 (1998/11 大月書店) ★★★★ was the previous entry in this blog.

【397】 △ 正高 信男 『天才はなぜ生まれるか』 (2004/04 ちくま新書) ★★★ is the next entry in this blog.

Find recent content on the main index or look in the archives to find all content.

Categories

Pages

Powered by Movable Type 6.1.1