【721】 ◎ デイヴィッド・オグルヴィ (山内あゆ子:訳) 『ある広告人の告白 [新版]』 (2006/06 海と月社) 《デビッド・オグルビー (西尾忠久/松岡茂雄:訳) 『ある広告人の告白 (1964/04 ダビッド社)》 ★★★★☆

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パートナーシップ、仕事に向き合う姿勢、コミュニケーションのあり方ついて多くの示唆。

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ある広告人の告白』 (1964/04 ダビッド社)『ある広告人の告白[新版]』〔'02年版〕 David Ogilvy (1911-1999/享年88)

 オグルヴィ&メイザーを1948年に設立したデビッド・オグルヴィが'63年に出版した本で、今まで自分の手元にあったのは、広告会社アド・エンジニアーズ設立者の西尾忠久氏らが訳した'64年初版のダビッド社版ですが、この度翻訳家・山内あゆ子氏の訳による新版が刊行されました。

 新版のための前書きがあるのと、著者の経歴が多少以前より詳しく書かれているほかは(この本は著者がパリのホテルで菓子職人をしていたときに学んだことから始まりますが、そのほかに家庭用コンロの販売員もしていたらしい!)内容構成は同じであるものの、訳がかなりこなれて読みやすくなっているのと、専門用語が多少現代風になっています。

 広告ビジネスに携わる人にとってはとりわけ示唆に富んだ内容で、前半部分は主に経営者や営業(アカウントエグゼクティブ)に対するアドバイス、後半はクリエイターに対するアドバイスになっており、個人的には、その間にある「よいクライアントであるために」(新版では「クライアントに贈る『15のルール』)とか、「キャンペーンを成功させるためには」などがなかなか良かったです(冒頭の「広告代理店の経営のしかた」において、行動規範をキッチリ示しているのもいい)。

 「私は、手放すと困るほど大きなアカウントを欲しいと思ったことはありません」とありますが、海外の広告代理店はAE制、つまり1業種1社の専任制なので、もともと売上げの割にはクライアント数が少なく、主要クライアント1社への依存度が高くなると、他社へ扱いを持っていかれたときに危険だということでしょう。

 この本が書かれた時点で、オグルヴィ社は社員497人の国内企業でしたが、'07年現在、世界125カ国に497のオフィスを持ち、当事の社員数が今のオフィスの数になったのだなあと。
 本書を読むとクリエイティブについて特出しているのがわかり、一方メディア手数料で仕事はするなと言っていますが、実際オグルヴィ社はメディア購買部門を持っていません。
 米国にはメディアバイイングを専門に行う会社があるので(まとめ買いする代理店が一番強いということ)、こうした業態は必ずしもオグルヴィ独自のものではなく、今後は日本でもこうした動きがあるかも。
 クライアントの広告表現の統一などブランディング戦略による利用広告会社の絞込みは海外でも日本でも進行していて、そうした意味でも今読んで全然古くない内容です。

 ただし、そうした広告に関することに限らず、ビジネス全般に通じるパートナーシップや仕事に向き合う姿勢のあり方、「聞き役に回れば回るほど"敵"にはあなたが賢く見える」といったビジネス・コミュニケーションについてのヒントなど、多くの示唆を含んだ良書です。
                        
《読書MEMO》
● 「よいクライアントであるために」(「クライアントに贈る『15のルール』」)
(1) あなたの代理店を恐怖から開放しなさい(いつも新しい代理店を探している様子をみせないこと)
(2) 最初から適切な代理店を選びなさい(新規取引専門部隊に騙されない)
(3) あなたの代理店に適切な情報を与えなさい
(4) 金の卵を生むニワトリを大切にしなさい(有能クリエイティブに金を惜しむな)
(5) クリエイティブの領域で代理店と競争しないでください(餅は餅屋に)
(6) 検討段階を多くして広告をゆがめないでください
(7) 代理店の利益を保証してやりなさい
(8) あなたの代理店にケチをつけないでください
(9) 率直にものを言い、また言われるようにしてください
(10) 目標を高いところに置いてください
(11) すべてをテストしてください(新製品は25のうち24までテストマーケティングで失敗している)
(12) 急いでください(利益は時間函数である)
(13) 問題児に時間を浪費しないでください
(14) 天才は寛大に扱ってやってください(彼らはほとんど例外なく気に食わない連中)
(15) 広告費を少なすぎないようにしてください
●「キャンペーンを成功させるためには」(「成功する『広告キャンペーン』とは?」)
(9)自分自身の家族に読ませたくないような広告は書かないこと(オグルヴィ・ジャパンのホームぺージにもこの言葉がある)

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This page contains a single entry by wada published on 2007年7月26日 16:56.

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【722】 ○ 郷原 信郎 『「法令遵守」が日本を滅ぼす』 (2007/01 新潮新書) ★★★☆ is the next entry in this blog.

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