【388】 ◎ ローナ・ウィング 『自閉症スペクトル―親と専門家のためのガイドブック』 (1998/11 東京書籍) ★★★★★

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重度自閉症の娘を持つ精神医学者による自閉症のベスト入門書。

自閉症スペクトル14.JPGLorna Wing.png 自閉症スペクトル.jpg The Autistic Spectrum.jpg
Lorna Wing
自閉症スペクトル―親と専門家のためのガイドブック』〔'98年〕
"The Autistic Spectrum: A Guide for Parents and Professionals"

 著者のローナ・ウィング(Lorna Wing、1928-2014)は、精神医学者であるとともに重度自閉症の娘の母親でもあるのですが、重度から高機能までのすべての自閉症を連続体(スペクトル)として捉える立場を本書で提唱しました。そこには、自閉症の子どもを対象としたサービスを、一見すると自閉障害には見えないアスペルガー症候群の子たちも受けられるようにしようという意図があったそうです。

 しかし、彼女の臨床分析自体は、恣意性を排した、科学者としての極めて冷静なものであり、自閉障害の特徴を示す"三つ組"の概念(社会的相互交渉・コミュニケーション・想像力の障害)や、孤立群・受動群・積極奇異群などのタイプ区分は、この本以降に出版された自閉症関係の本の多くで引用されています。

 また本書は、自閉障害を持つ子どもの支援方法にページを多くさいていており、解説も極めて具体的で丁寧なものとなっています。

 多少大部な本かもしれませんが、翻訳もよく吟味されたものなので、自閉症を理解しようとするならば、この本は入門書としてベストに近いものであると思います。

《読書MEMO》
●「自閉症スペクトル」の概念
・カナーの提唱した自閉症に、アスペルガーの提唱したアスペルガー症候群、さらにその周辺の厳密にはどちらの定義をも満たさない一群を含めた比較的広い概念。
※英国では「自閉症スペクトラム(スペクトル)」、米国では「広範性発達障害」という用語の使われ方をすることが多いが、「自閉症スペクトル」の概念の方が「広範性発達障害」より広い(内山登紀夫・篇『高機能自閉症・アスペルガー症候群入門-正しい理解と対応のために』('02年/中央法規出版)
●「自閉症スペクトル」の特徴...「ウィングの3つ組」
 1.社会性、2.コミュニケーション、3.想像力の3領域に障害
●「自閉症スペクトル」の3つのタイプ
 1.孤立群、2.受動群、3.「積極・奇異」群

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ローナ・ウィング(Lorna Wing)イギリスの精神科医。2014年6月6日逝去。満85歳。(1928年10月7日 - 2014年6月6日)

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