【143】 ○ 加賀見 俊夫 『海を超える想像力―東京ディズニーリゾート誕生の物語』 (2003/03 講談社) ★★★★

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〈映画〉から〈海〉へ、〈カリブ海〉から〈地中海〉へ。プロジェクの交渉過程やディズニーのこだわりがわかり、興味深い。

海を超える想像力.jpg 『海を超える想像力―東京ディズニーリゾート誕生の物語』 (2003/03 講談社)

 オリエンタルランド(OLC)社長が語るディズニーリゾートの誕生まで、さらに誕生後20年の歴史で、巨大プロジェクトがどういう形で進行したのかということだけでなく、「顧客満足」を念頭に置いたディズニーの〈細部へのこだわり〉がわかるという点でも面白かったです。

 '60年の会社設立当時は、浦安沖埋立て事業が当面の仕事で(だから社名に"ランド"と付いている)、そこに商業・住宅・レジャー施設を誘致して活用しようという漠たる計画しか無かったわけで、その時にディズニーランド誘致を構想した高橋政知という人がやはりスゴイ。

 開業後も「テーマパークは生き物であり、進化を止めたとき老化が始まる」と言う通り、様々なプロジェクトが常に生起しているのがわかり、著者が社長となり陣頭指揮したディズニーシー開業の秘話は興味深く、とりわけ、ライセンシーのOLCとライセンサーのディズニーの交渉過程は、外国人と交渉することがあるビジネスパーソンなどには参考になる部分が多いのでないでしょうか。

1-3.jpg 「第2パーク」構想でディズニー側が最初に示したプランは、MGM(映画)だったんですね。でも、日本人は米国人ほど映画文化に執着は無く、そこで〈シー(海)〉になったとのこと。
 〈シー〉と決まってからも、相手(米国本社側)はシーと言えば〈カリブ海〉をイメージしているけれど、日本人が憧憬を抱くのはむしろ〈地中海〉であって、結局「メディタレーニアン(地中海)ハ―パー」ということになったとか、入り口の巨大アイコンも、米国側は当初〈灯台〉を想定していたけれど、それだと日本から見るとウェットな世界になってしまうので(「喜びも悲しみも幾歳月」の世界?)結局〈地球〉になったとか―、そうした文化的修正の過程も興味深いです。

 〈シー〉や〈イクスピアリ〉にどれだけOLC側の独自姿勢が生かされているかと宣伝気味の嫌いはあり、著者が経済同友会の副代表にもなったように経営は一定の安定期にあるかと思いますが、まだ投資負債は残っているはずで、さらに大衆に近いビジネスだけに利用者サイドからも毀誉褒貶はあります(個人的にも、平日に関わらず、ポップコーンを買うだけで30分以上も並ぶような状況は何とかして欲しい!)。
 
 とは言え、そうしたことを抜きにして、プロジェクト物語としてよく纏まっていて(ライターがいい?)、〈シー〉開業前に亡くなったランド設立の立役者・高橋氏の遺体を乗せた霊柩車が夜のパーク内に入っていく最後のところには、ちょっとグッときました。

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This page contains a single entry by wada published on 2006年8月17日 00:28.

【142】 × 森永 卓郎 『年収300万円時代を生き抜く経済学』 (2003/02 光文社) ★☆ was the previous entry in this blog.

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