【142】 × 森永 卓郎 『年収300万円時代を生き抜く経済学 (2003/02 光文社) ★☆

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こんな人に"分相応"を説かれたくはないなあ、という気もしてしまう。

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年収300万円時代を生き抜く経済学 給料半減が現実化する社会で「豊かな」ライフスタイルを確立する!』['03年/光文社]

 冒頭で小泉内閣の経済政策を批判し、デフレへの対応を誤ったゆえに雇用創出にも失敗し、失業の拡大を招いたとしています。
 デフレは止まらず、このままでは日本に新たな階級社会が作られ、所得は3階層に分かれると。

 つまり、1億円以上稼ぐ一部の金持ちと年収300万円くらいのサラリーマンと年収100万円台のフリーター的労働者に。最初の大金持ちになれるのは1%ぐらいしかいないから、金持ちになる幻想は捨てて、なんとか真ん中の年収300万円の層に留まり、その中でどう生きるべきかを考えよと。
 アメリカンドリーム的な成功を目指して必死で働くよりも、ヨーロッパの一般市民階級のように人生を楽しむことを優先せよと、発想の転換を促しています。

 これは大企業などに長年勤め、すでに子どもの教育も持ち家のローン終わり、なおかつ一定の蓄えがあり、老後の公的年金や上乗せとしての企業年金が保証されている人ならば納得するかもしれませんが、不況やリストラで年収300万円を稼ぐのも大変な立場にいる人にとってはどうでしょうか。

 アルゼンチンの楽天的な国民性をあげ、都道府県別の自殺率と失業率の逆相関を「ラテン指数」と名付けたりしていますが(沖縄県が最も高い)、最後は気の持ちようみたいな結論は、著者自身のお気楽な精神論にすぎないのではないかとも思えます。

 自分は車を外車からカローラにし、その後軽自動車に変えたとか言っても、一方で、本書がベストセラーになるや「年収300万円時代」とタイトルに入った本を何冊も書いている―(誰かが計算してたが、本書の印税だけで軽く3千万円を超えるとか)。
 こんな人に"分相応"を説かれたくはないなあ、という気もしてしまいます。

 大体、『〈非婚〉のすすめ』('97年/講談社現代新書)などという本を書きながら、自分はしっかり結婚している、そういう人なので、書いてあることにあまり踊らされない方がいいかも。

 【2005年新版文庫化[知恵の森文庫]】

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