「●人事・賃金制度」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【026】 嶋田 利広 『「人件費の構造改革」で会社は蘇る』
「基本給」パターン14例を具体例をあげて丁寧に解説。実践的で密度の濃い1冊。
『「仕事給時代」の人事・賃金システム-新しい職能・業績給の実践手法』〔'00年/ダイヤモンド社〕
本書では、人事・賃金制度のこれからを展望したうえで(第1章)、人事制度を策定するにあたっては、まず仕事をベースとする「職務基準」でいくのか能力をベースとする「職能基準」でいくのか、両者をミックスさせたものにするかを決めなければならないとし、それぞれの等級制度の具体例で説明しています(第2章)。
さらに、賃金制度における「基本給」の構築においても、年功給から仕事給への移行を前提に、「職能給」「職務給」または「職務・職能給」をその中心に据えるべきとし(本書ではこれらを「仕事給」という概念で捉えている)、併存型を中心に「基本給」のパターンを14例あげています(第3章)。
「基本給」パターン14例の内訳は、「年齢給+職能給」が3つ、「職務給+職能給」が2つ、「職務・職能給」が2つ、「職務給+職務遂行給(業績給)」が2つ、職掌・職群により区分けした「混合型」が3つ、「業績給一本型」が1つ、「全社員年俸制」1つとなっています。
以降(第4章〜第8章)、それぞれの「基本給」パターンを解説していますが、説明と企業での採用事例が密接に結びつき、具体性のある内容になっています(むしろ先行企業で採用されている事例などから14例を抽出したという印象で、この数の多さが本書の最大の特長だと思います)。
最初は基本パターンだけでこんなにあるのかという印象も受けますが、例えば同じ「職務給+職能給」型でも、職務給を固定的なものにするか変動的要素を入れるかで、制度の意味合いが異なってくることが、事例の解説などを通してよくわかり、これだけのパターンをあげていることにそれなりの意味があることが理解できます。
「基本給」制度だけでなく、業績賞与制度(第9章)や新しいタイプの退職金制度(第10章〜第12章)、65歳継続雇用における人事賃金制度(第13章)、確定拠出年金制度(第14章)にも触れられていて、理解の助けとなる図表や資料も豊富で、賃金制度を策定する側から見て、実践的で密度の濃い1冊であると言えます。