【024】 ◎ ウイリアムマーサー社 『実践Q&A 戦略人材マネジメント (2000/04 東洋経済新報社) ★★★★★

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人材コンサルティング会社による本。たいへん実践的かつ戦略的だと思えた。

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実践Q&A 戦略人材マネジメント』(2000/04 東洋経済新報社)

business plans that they create will.bmp 戦略人材コンサルのウイリアムマーサー社(現マーサーヒューマンリソースコンサルティング社)による本書は、SHRM(戦略的人材マネジメント)がテーマですが、制度に踏み込んで書かれているため、書名どおり実践的です。

 それは、本書の95項目のQ&Aのうち、資格制度改革が27項目、報酬制度改革が12項目、評価制度改革が13項目、福利厚生・退職金年金制度が10項目という具合に、「制度」関連の項目が占める割合の高さにも表れています。
 
 ただし、「報酬制度はなぜ単純化した方が良いのか」「報酬レンジによって社員にどのようなメッセージを伝えるのか」「昇給マトリックスによって社員にどのようなメッセージを伝えるか」などといった設問の立て方からも窺えるように、制度について語る場合も常に戦略的思考をバックに据えているのがわかります。  
 このことは、制度策定において、大変重要なことであると思います(バックに戦略がなければ、制度のための制度になってしまいます)。 
  
 本書では、資格制度については基本的には"役割主義"を提唱しており、「役割評価」においてその評価基準となる6つのファクターを示し、その1つ1つについて1項ずつ(見開き2ページ)を割いて説明してます。  
 また、評価の核になる「コンピタンシー」についても、概念定義や測定方法を詳説し、"コンピタンシー・モデルを作るために必要なコンピタンシー"などといった項目もあり、評価におけるコンピタンシー以外の評価要素の選定とそれらとの組み合わせ方(一般的には目標管理制度との組み合わせとなる)、目標管理制度の機能のさせ方についても述べられています。  
 こうした説明の細やかさにも、「役割評価」「コンピタンシー」「目標管理制度」などが、目的概念の把握が充分でないまま制度策定がスタートした場合に、「導入すること」自体が目的化し、戦略的意図の伴わないのものになってしまう―これではでは意味が無いのだという本書のメッセージが感じ取れます。
 
 人事制度改革に取り組んでいる実務者にとってすぐに役立つばかりでなく、SHRM(戦略的人材マネジメント)に携わるすべての人にとって、戦略的HRM理論を概念整理する助けにもなるのではないかと思いました。

《読書MEMO》
●BSC(バランスドスコアカード)... 1.財務の視点 2.顧客の視点 3.社内ビジネスプロセスの視点 4.学習と成長の視点-企業価値向上へ向けての戦略的ストーリーを描くことを意図している(66p)
●役割評価の6つのファクター...◆知識.◆対人・マネジメントスキル◆分析・判断力◆相違・気転◆意思決定力 ◆影響力
●報酬制度は何故単純化した方が良いのか(112p)
●報酬レンジによって社員にどのようなメッセージを伝えるのか(116p)
●昇給マトリクスによって社員にどのようなメッセージを伝えるのか(120p)

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