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「●日本のTVドラマ (90年代~)」の インデックッスへ(「松本清張特別企画・影の車」)
再会した女性に溺れると同時に、彼女の幼い息子の不信な目に怯える主人公の心理。
『影の車 (1961年)』『潜在光景―恐怖短編集 (角川ホラー文庫)』『潜在光景 (角川文庫) 』『影の車: 松本清張プレミアム・ミステリー (光文社文庫プレミアム) 』「影の車」['01年/TBS]風間杜夫・原田美枝子
都心から80分ばかりかかる住宅地に住む浜島幸雄は、会社帰りのバスの中で、小磯泰子から声をかけられ、学生時代以来の再会をする。1週間後、再びバスの中で遭遇した泰子は、家に立ち寄るよう勧めた。思い切ってバスを降りた浜島は、泰子が夫を失い、保険の集金の仕事をしながら、6歳の健一という名前の息子と二人で暮らしているのを知る。泰子の態度に、妻には見られないやさしさを感じる浜島。他方、浜島の妻は、それほど温かい気持ちの女ではなく、家の中は索漠としていた。浜島と泰子の間は急速に進み、二人は結ばれる。少ない収入にもかかわらず、浜島に心から仕える泰子。しかし、息子の健一はひどく人見知りし、一向に浜島に馴れない。泰子と話をしていても、健一の存在が煙たく、気持ちにひっかかってくる浜島。浜島はふと、自分の小さいときの記憶を途切れ途切れに思い出すようになったが、その記憶に潜在する光景が、現在の浜島に思わぬ影をもたらす―。
松本清張の「婦人公論」1961(昭和36)年1月号から8月号まで連載され、同年8月、中央公論社より単行本が刊行された連作短編『影の車』の内の1つ(「婦人公論」1961年4月号発表)。
20年ぶりに再会した泰子に溺れていくと同時に、彼女の幼い息子の不信な目に怯える主人公の心理がよく描かれていて、最後の幼い頃に自らの犯した行動への罪の意識ともうまく重なっているように思いました。因果は巡る、って感じでしょうか。少年の殺意というモチーフは「天城越え」などにもありました。
この作品は、野村芳太郎監督、橋本忍脚本、加藤剛(浜島幸雄)・岩下志麻(小磯泰子)・小川真由美(浜島啓子)主演で「影の車」('70 年/松竹)として映画化されているほか、これまでに以下3回ドラマ化されています。
野村 芳太郎 「影の車」(1970/06 松竹)★★★★
・1971年「影の車」(フジテレビ)日色ともゑ・園井啓介・岡本久人・橋爪功
・1988年「松本清張サスペンス・潜在光景」(関テレ・フジテレビ) 水谷豊・大谷直子
・2001年「松本清張特別企画・影の車」(TBS)風間杜夫・原田美枝子・浅田美代子
このうち、2001年の風間杜夫版を観ました(脚本は橋本忍の娘・橋本綾)。原田美枝子が演じる小磯泰子は、保険の集金人から臨時雇いの看護師に変更されていて、風間杜夫が演じる主人公の浜島幸雄の方が、大手保険会社の管理職になっているほか、浅田美代子が演じる浜島の妻・啓子は、毎週土曜日に自宅で近所の主婦を集めてフラワーアレンジメントの教室を開いているという設定になっています(したがって、もともと土曜日は主人公は自宅から締め出される習慣があり、これが泰子との逢瀬には好都合になるいう設定は巧い)。
風間杜夫(1949年生まれ・当時51歳)はこうした役が似合っている俳優に思えましたが、それ以上に小磯泰子を演じた原田美枝子(1958年生まれ・当時42歳)が母として女としての情感を滲み出させていて流石です(原田美枝子はこの演技で第38回TBS「ギャラクシー賞奨励賞(テレビ部門)」受賞)。次女の石橋静河がちょうど6歳ころの出演作になるなあ。浅田美代子(1956年生まれ・当時44歳)の演技もまずまず。この人は大成しないかと思いましたが、結構息の長い女優になりました。
「松本清張特別企画・影の車」●制作年:2001年●監督:堀川とんこう●脚本:橋本綾●音楽:川崎真弘●原作:松本清張●出演:風間杜夫/原田美枝子/片岡鶴太郎/浅田美代子/村田雄浩/石野真子/友里千賀子/螢雪次朗/川俣しのぶ/大塚良重●放映:2001/02/19(全1回)●放送局:TBS
【1973年文庫化[中公文庫]/1983年再文庫化[角川文庫]/2018年再文庫化[光文社文庫(松本清張プレミアム・ミステリー)]】
《読書MEMO》
●『影の車』連載時ラインアップ
『確証』(婦人公論・1961年1月号)
『万葉翡翠』(婦人公論・1961年2月号)
『薄化粧の男』(婦人公論・1961年3月号)
『潜在光景』(婦人公論・1961年4月号)
『典雅な姉弟』(婦人公論・1961年5月号)
『田舎医師』(婦人公論・1961年6月号)
『鉢植を買う女』(婦人公論・1961年7月号)
『突風』(婦人公論・1961年8月号)...... 単行本化時に除外された作品。