【3023】 ○ フェルナンド・メイレレス (原作:ジョン・ル・カレ) 「ナイロビの蜂」 (05年/英・独・米・中国) (2006/05 ギャガ・コミュニケーションズ) ★★★★

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先進国の経済は発展途上国の犠牲の上に成り立っているのではないかと考えさせられる。

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ナイロビの蜂 [DVD]」レイチェル・ワイズ/レイフ・ファインズ
「ナイロビの蜂」pos.jpg ガーデニングが趣味の物静かな英国外務省一等書記官のジャスティン(レイフ・ファインズ)は、スラムの医療施設を改善する救援活動に励む妻テッサ(レイチェル・ワイズ)と、ナイロビで暮らしていた。しかし突然、テッサがトゥルカナ湖の南端で殺害されたという報せが届く。彼女と同行していた黒人医師アーノルド(ユベール・クンデ)は行方不明。警察はよくある殺人事件と断定して処理しようとするが、その動きや、テッサに密かに思いを寄せていた同僚サンディ(ダニー・ヒューストン)の不審な振る舞いから、疑念にかられたジャスティンは、妻の死の真相を独自に調べ始める。そして、アフリカで横行する薬物実験、大手製薬会社と外務省のアフリカ局長ペレグリン(ビル・ナイ)の癒着という、テッサが生前暴こうとしていた世界的陰謀を知る。命の危険にさらされながら、テッサの想いを引き継ぐジャスティンは、その過程で、改めてテッサへの愛を実感していく。しかし、やがてジャスティンもテッサと同じように―。

「ナイロビの蜂」l.jpg 2005年制作のブラジル人監督フェルナンド・最優秀助演女優賞 レイチェル・ワイズ.jpgメイレレスによる作品で、原作は、昨年結果的に['20年]12月に亡くなったジョン・ル・カレ(『寒い国から帰ってきたスパイ』『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』)が2001年に発表した同名小説『ナイロビの蜂』(原題:The Constant Gardener)です。この映画化作品で、ナイロビのスラム街で医療救援活動に励む女性テッサを演じたレイチェル・ワイズは、2005年のアカデミー助演女優賞を受賞しています(「ニューオーリンズ・トライアル」('03年)の時はあまり印象に残らない使い方をされていたので、この作品で受賞出来て良かった)。

 ストーリーは1980年前後に原作者が実際に取材した内容を下敷きにしたフィクションだそうですが、その時の取材対象は、新型コロナウイルスワクチンが目下['21年]世界中の争奪戦になっているあのファイザー製薬が、かつてナイジェリアで治験を行った細菌性髄膜炎治療だったとのことです(小説と類似した問題が存在したことを匂わせている)。

THE CONSTANT GARDENER1.jpg 原題の意味は「誠実な庭師」で、レイフ・ファインズが演じた外務省一等書記官であるジャスティンの趣味がガーデニングであることに重ねて、彼が外交官でありながらも元来は政治に関心の薄いノンポTHE CONSTANT GARDENER2.jpgリであることを示唆しているようです。そのジャスティンが、亡きテッサへの信愛から、その死の謎を探るうちに、大手製薬会社と政治家の癒着という闇の世界にどんどん喰い込んでいき、改めて彼女への愛を深めつつ、自らを犠牲にしてまでも、彼女から引き継いだ真相究明の責務を果たすまでに変貌する様が、テンポよく描けているように思いました。

「ナイロビの蜂」9.jpg ケニアの首都ナイロビのスラム街は、「シティ・オブ・ゴッド」('02年/ブラジル)で同じくリオのスラム街をで撮ったフェルナンド・メイレレス監督をして「見たことない劣悪さ」と言わしめたそうですが、現地での撮影交渉やエキストラ確保において困難を極める中で、現地の人々い映画の趣旨を丁寧に説明して賛同を得たり、交換条件として橋を建造したりして協力を得たとのことです。結果的には、ハンディカメラなどを使って現地の人々をドキュメンタリータッチで撮るというやり方は、貧困の中でも逞しく生きる現地の人々の息吹を伝え、成功しているように思いました。その上で、先進国の経済は発展途上国の犠牲の上に成り立っているのではないかということを改めて考えさせられる重い作品でした。

「ナイロビの蜂」7.jpg この映画におけるテッサとジャスティンの出会いについて、テッサがジャスティンに最初は突っかかるような感じの質問をしてそのあ「ナイロビの蜂」f.jpgと極めて能動的に接近したのは(すぐにベッドインしたね)、ジャスティンが外交官であり、彼と結婚すればアフリカに行けると考えたからではないかとの見方があるようですが、確かにテッサには目的のためには手段を選ばないという一面もありはするものの、ヒロインに関してそういう解釈のもとに映画を撮る監督が果たしているものでしょうか。個人的には、やや穿ち過ぎた見方のように思います。

「ナイロビの蜂」bk.jpg ラストで、テッサと不倫関係にあったのではと噂されたアーノルドが実はゲイだったというのは(この映画、ここだけ笑える)、テッサもきっちりジャスティンを愛していたということの証左とまでは言わないまでも、そうした疑念への反証を示唆しているように思えました(もしかしたら、監督はそんなことまで考えてなかったかもしれないが)。

「ナイロビの蜂」22.jpg「ナイロビの蜂」●原題:THE CONSTANT GARDENER●制作年:2005年●制作国:イギリス・ドイツ・アメリカ・中国●監督:フェルナンド・メイレレス●製作:サイモン・チャニング・ウィリアムス●脚本:ジェフリー・ケイン●撮影:セザール・シャローン●音楽:アルベナイロビの蜂  .jpgルト・イグレシアス●原作:ジョン・ル・カレ「ナイロビの蜂」●時間:128分●出演:レイフ・ファインズ/レイチェル・ワイズ/ダニー・ヒューストン/ビル・ナイ/ユベール・クンデ/ドナルド・サンプター/ジェラルド・マクソーリー/リチャード・マッケイブ/ピート・ポスルスウェイト/ジュリエット・オーブリー/アネク・キム・サルナウ●日本公開:2006/05●配給:ギャガ・コミュニケーションズ●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(19-02-12)(評価:★★★★)

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