【2268】 ◎ ラリー・ボシディ(ローレンス・ボサイディー)/ラム・チャラン/チャールズ・バーク (高遠裕子:訳) 『経営は「実行」―明日から結果を出すための鉄則 〔改訂新版〕』 (2010/10 日本経済新聞出版社) 《[初版] (2003/02 日本経済新聞社)》 ★★★★☆

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○経営思想家トップ50 ランクイン(ラリー・ボシディ(ローレンス・ボサイディー)/ラム・チャラン)

「実行」は人材・戦略・業務の3プロセスから成る。人事・経営企画に多くの示唆を与える本。
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経営は「実行」〔改訂新版〕』['10年/改訂新版]『経営は「実行」―明日から結果を出すための鉄則』['03年]
Execution: The Discipline of Getting Things Done(2002)
Execution:The Discipline of Getting Things Done_.jpg 2002年原著刊行の『経営は「実行」』の改訂新版(2009)の訳本であり、著者のラリーボシディ(ローレンス・ボサイディー)はハネウエル・インターナショナル前会長兼CEOで、GE(ゼネラルエレクトリック)で副会長を務めたこともあり、一方のラム・チャランも著名なコンサルタントで、大学でも教鞭をとっている、つまり、アカデミックな立場の人物と、経営の実務者のコラボレーション的な作りになっている本です。

 第Ⅰ部の第1章と第2章では、経営においては、「実行」が大切であり、掲げた目標、実行項目は、常に「実行」されなくてはいけない、その「実行」を進めるために「人材プロセス」「戦略プロセス」「業務プロセス」を、それぞれ連動させる必要があるとし、なぜ今日実行の体系がこれほど重要なのか、どのようにして競争相手と差をつける手段になるかを説明しています。また、多くの企業で見られる失敗として、リーダーは実行を他人に任せ、もっと「大きな」問題に注力すべきだと考えている点にあるとしています。

 第Ⅱ部の第3章から第5章では、「実行」が自然に起こるわけではないことを示しています。基本的な要素を確立する必要があること、そして、特に重要な構成要素は、リーダー自身がとるべき行動、文化変革の社会的ソフトウェア、リーダーにとって最も大切な仕事である人材の選抜と評価であることを示しています。また、適材を適所にあてることは、他人に任せてはならないリーダーの仕事であるとしています。

 第Ⅲ部は実践編で、第6章から9章まで、人材、戦略、業務の3つのコア・プロセスについて論じています。これらのプロセスを効率的にするには何が必要か、各プロセスのプラクティスを、ほかの二つのプロセスと連動させ、どのように統合するかを示しています。第6章で扱う人材プロセスは、三つのプロセスの中でも最も重要であるとし、人材プロセスがうまくいけば、リーダーの遺伝子プールが生まれ、それによって実行可能な戦略を策定し、それを業務計画に落とし込み、各自の責任を明らかにすることができるとしています。

 第7章と第8章では戦略プロセスを取り上げ、有効な戦略を策定すれば、上空1万メートルの概念が現実に根ざしたものになることを示しています。このプロセスでは、実現の可能性を試しながら、戦略の柱をひとつずつ作っていきます。戦略プロセスは人材プロセスと結びついており、戦略やその背後の論理が、市場や経済、競争相手の現実に即したものなら、人材プロセスが生きることになる、つまり、適材が適所に配置されていることになるとしています。

 第9章では、どんな戦略も、具体的な行動に落とし込まなければ、結果を生まないことを示しています。業務プロセスは、戦略を実行するための段階を踏んで業務計画を策定する方法を示すものであり、戦略と業務計画はいずれも人材プロセスと結びついていて、業務計画の実行に必要な能力と組織の能力とが一致しているかどうかが問われることになるとしています。

 「実行」とは何をどうするかを厳密に議論し、質問し、絶えずフォローし、責任を求める体系的なプロセスであるということになります。経営環境を想定し、自社の能力を評価し、戦略を業務や、戦略を遂行する人材と結びつけ、様々な職種の人々が強調できるようにし報酬を結果と結びつける事であって、つまり、経営者は、常に細部まで理解する必要があり、絶えず質問を繰り返し理解を深め、部下に委任するのではなく積極的に関与する事が大切であると説いています。

 人事コンサルタントなどの人事パーソンにとっての読み処は第6章でしょうか。人材プロセスを戦略・業務プロセスとどう連動させるかを説いています。そこでは、4つの構成要素として、人材を戦略とどう結びつけるか、継続的改善・後継者層の充実・離職リスクの軽減を通して、リーダーシップ・パイプラインをどう形成するか、業績不振者にどう対処するか、人事部門を事業と結びつけることの重要性が説かれており、近年盛んな人材管理(タレント・マネジメント)論の嚆矢となったラム・チャランらしい論理展開からは、多くの示唆が得られるものと思われます。経営者、CEOが読んでもいい本ですが、人事・経営企画担当者はむしろ是非とも押さえておきたい本かと思われます。

【2203】 ○ ジャック・コヴァート/トッド・サッターステン (庭田よう子:訳) 『アメリカCEOのベストビジネス書100』 (2009/11 講談社)

《読書MEMO》
●実行を支える第一の要素=「リーダーがとるべき7つの行動」
1.自社の人材や事業を知る
2.つねに現実を直視するよう求める
3.明確な目標を設定し、優先順位をはっきりさせる
4.最後までフォローする
5.成果を上げた者に報いる
6.社員の能力を伸ばす
7.己を知る
●実行を支える第二の要素=「企業文化の変革に必要な枠組みを作る」こと
・報酬と業績を連動させることで、社員の行動を変える。
・社員が新たに求められる行動を身につけるのを助ける。
・オープンで率直な議論によって、現実を浮き彫りにする。
●実行を支える第三の要素=「適材を適所にあてる」こと
・リーダー自ら、人材の選抜や評価に積極的に関与する。
・学歴や知性に惑わされず、実行力を重視した人選をする。
・個人の実績を評価する際には、どのような方法で目標を達成したかを詳しく検討する。

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