【1853】 ◎ 元井 弘 『コア人財の人事システム』 (2011/11 生産性出版) ★★★★★

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コア人材対象の「ジョブ・キャリア人事システム」を提唱。概念整理から制度への落とし込みまでかっちりしている。

『コア人財の人事システム』.JPGコア人財の人事システム 02.jpg 『コア人財の人事システム』(2011/11 生産性出版)

 グローバル化が進行する経済環境下にありながらも、日本企業の経営・人事システムは、日本固有の規制や慣行に縛られ、また守られている面が少なからずあり、問題や改革課題を先送りしている企業は多いと思われます。

 ベテランのコンサルタントである著者は、そうした認識のもと、本書の冒頭において、これまでの日本的経営・人事システムで戦って勝てるのか、社内の若年層はプロフェッショナルとして精鋭化しているか、コア人財がどれだけいて、コア人財に適合した公正な人事システムとなっているか、といった問いかけをしています。

役割業績主義人事システム.jpg役割業績主義人事システム 新版.jpg 著者は以前より、人事管理の基準を役割と業績に置く「役割業績主義人事システム」を提唱していましたが(『役割業績主義人事システム』('05年/生産性出版、'09年新版))、本書ではこうした日本企業の現状を踏まえ、それに加えて新たに、経営層、マネジャー、ビジネスリーダー、プロフェッショナルなどあらゆるコア人財を育成し、活用し、評価し、処遇するための、コア人財を対象とした「ジョブ・キャリア人事システム」を提唱しています。

役割業績主義人事システム』(2009/09 新版)

 本書におけるコア人財とは、「企業において、事業や経営におけるコアポジション・コアジョブを担当し、高度なスキル・キャリアと自ら動機づけられた'事業家あるいは経営マインド・志'を持ち、自立的にそのミッションを果たす人財のことをいう」とされており、ここでいう「キャリア」とは、「実践能力」と「職務実績、すなわち職歴・職務経験や実績」という2つの意味があるとのことです。

 コア人財の人事システムは、各ジョブステージにおいてキャリア能力を極め、キャリア実績を積み上げていくことをベースとしたものとなり、これが「ジョブ・キャリア人事システム」であるとのことですが、そうしたコア人財の人事フレームの概念図が詳細に解説されているばかりでなく、目標管理・人事考課・賃金・賞与などの各制度に落とし込んだ場合、それらはどのようなものであるべきかについても丁寧に解説されています。

 それら制度の具体的な姿は、これまで著者が「役割業績主義人事システム」における各制度として提唱してきたものと重なる部分はありますが、最後に、属人的人事制度(職能制度)や、一般的な属職的人事制度(職務・役割等級制度)とジョブ・キャリア人事制度の違いなどが一覧にされているため、根本概念におけるその特徴や従来制度との相違点が改めて確認できるようになっています。

 コア人財に特化した人事コースを想定していることが本書の特徴であり、職群管理の一種と言えるかと思いますが、従来型の役割等級制度と比較して、コア人財に早期にキャリアを積ませるという"育成"のベクトルが強く織り込まれているため、役割等級制度が「静態」的であるとすれば、「ジョブ・キャリア人事システム」は「動態」的であるとの印象を、個人的には抱きました。

 若年層からのグローバル人材の育成は、多くの企業にとって喫緊の課題であり、本書はそうしたニーズに応え、人事システム改革の方向性を示すとともに、具体的な制度の策定において多くの示唆を与えるものとなっているように思いました。

《読書MEMO》
●目 次
第1編 経営・人事の戦略的課題
 第1章 日本的経営・人事システムのパラダイムシフト
 第2章 グローバル化への人事の対応
 第3章 若年層の活用とエイジフリーへの対応
 第4章 コア人財の人事の構築
 第5章 属人的システムから属職的システムへの転換
 第6章 コア人財の人事システムの確立
第2編 コア人財のための人事フレーム
 第7章 戦略的経営におけるコア人財とは
 第8章 コア人財のプロフェッショナル職群における概念
 第9章 ジョブ・キャリア人事システムとは
 第10章 ジョブ・キャリア人事フレームの構築
 第11章 コア人財の人事システムの運用
第3編 ジョブ・キャリア人事システムの目標管理・考課・賃金
 第12章 コア人財の目標管理
 第13章 コア人財の人事考課
 第14章 ジョブ・キャリア人事システムにおける賃金制度
 第15章 ジョブ・キャリア人事システムにおける賞与制度と年俸制

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This page contains a single entry by wada published on 2013年4月 6日 14:03.

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