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職務と役割を明確に区分。理論整理にだけでなく実践的参考書としても役立つ。
『役割業績主義人事システム』 〔'03年/生産性出版〕
本書の最大の特徴は、一般に"「職能主義」から「職務・役割主義」へ"といった具合に一括りに言われる"職務"と"役割"を、明確に概念区分している点にあるかと思います。
"役割"というのは、「職位・職務上の責任・権限である職責に、業務の拡大・革新等のチャレンジ度を付加したもの」で、"職務"というものが業務的な捉え方であるとすれば、"役割"というのは機能的な捉え方ということになり、等級制度の策定などにおいて従業員を格付け区分する際には、"職務"よりも"役割"という概念を入れた方が、制度策定 およびその後の制度運用に柔軟性を持たせることが可能であるということです。
また、役割における最終結果(アウトプット)しか見ない成果主義を不充分とし、最終成果に結びつく行動実績(インプット)を併せて見ること(業績主義)を提唱しています。
こうした職能、職務、役割、業績といった概念が最初にわかりやすくまとめられています。
内容構成は、等級制度(役割等級制度)→基本給(役割業績給)→賞与制度→退職金制度→目標管理制度→人事考課制度といった流れになっていますが、例えば役割業績給の運用についても7つのパターンを解説しているように、"簡潔かつ詳しい"記述となっています。
とりわけ、7パターンの冒頭にある「評価替え(洗い替え)」方式や、その応用型である「複数グレード型評価替え」方式に、先進性と導入の実現性を感じます。
目標管理の基本要素は、成果目標、課題目標、役割目標としていますが、人事考課においては、目標達成度以外に、プロセスの評価(マネージャーはマネジメント考課)と役割行動評価(コンピテンシー)を提唱しています。
役割等級制度を入れる場合、一般職については職能主義を残すとすれば、職能資格制度とのダブルラダーになりますが、本書に示された「役割キャリア給」という"属人的役割給"の概念を用いることで、役割等級制度に一本化するやり方もあるなあ、とか、制度構築に際してのいろいろなヒントが得られ、理論の構築・整理にだけでなく実践的参考書として役立つ本だと思いました。
【2009年新版】