【1724】 △ 小飼 弾 『新書がベスト─10冊で思考が、100冊で生き方が変わる』 (2010/06 ベスト新書) ★★★

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 新書の買い方・読み方・活かし方、各レーベルの特徴―いずれもまともだが...、多分に物足りない内容。
新書がベスト2.jpg新書がベスト .jpg 『新書がベスト (ベスト新書)

0小飼 弾 『新書がベスト.jpg 勝ち組になるために本を読めとか(未だに「勝ち組・負け組」なんて言って煽っているのか)、新書だけを読んでいればいいとか(確かに立花隆氏のようにノンフィクションしか読まないという人はいるが、立花氏の場合、読んでいる本のレベルが違う。フツーの人はそういうものでもなかろう)、こうした著者の前提についてはいろいろ括弧書きのようなケチをつけたくなりますが、新書そのものについて、或いは、その買い方、読み方、活かし方について書かれた前半部分は、比較的しっくりくるものでした(際立って斬新な内容と言えるものは無かったが)。

 新書を数こなして読もうとすると、自ずと著者の言うような読み方になっていくのではないかなあと。体系立てて読まないと特定分野のことは身につかないし、と言って、分野をアプリオリに規定してしまうと、そこが自分の教養の地平線になってしまう。そこで、同じ新書レーベルから無作為に何冊か選んで読んでいく「レーベル読み」といった発想もあっていいのでしょう。但し、やり過ぎると、数をこなすのが目的化する読み方になるのではないかなあ(この本自体の指向が、ややそのキライがあるが)。

 後半は、各新書レーベルの特徴が、何冊かそのレーベルの代表的なラインナップをピックアップしながらコンパクトに書かれていて、これも、まあ、ある程度新書を読んでいる人ならば納得できるものではないでしょうか。

 個々の本の評価については、著者自身、自分の価値観が反映されていると言っているように賛否はあろうかと思いますが、レーベル自体の評価は、「貫禄ある老舗レーベル―岩波新書」とか、「じっくり時間をかけて仕上げる―中公新書」とか、「社会派老舗の風格―ちくま新書」とか、まともと言えばまとも、癖が無いと言えば癖が無いように思えました。

 「講談社現代新書」がかなり後の方にでてきて、「コンセプトが迷走?」としていますが、これは当たっているなあと。でも、これも多くの読者が感じていることではないでしょうか。かつては、エスタブリッシュメントだったし、表紙に本の内容の丁寧な"口上"があったのが本を選ぶ際の助けとなり、昔の講談社現代新書は本当に良かったです。

 編集者と話しながら書いた結果、やけに中立的立場の本になったのではないかというような気もしますが、その分、評価の偏りが少ないように思われ、新書読み「初心者」向けの読書ガイドとしては、そう悪くないと思います(この本自体が、立ち読みで最後まで読めてしまうような本である)。
 
 新書ガイドブックとしてはまあまあ。でも、新書をある程度読み込んでいる人には、多分に物足りない内容でしょう(「ベスト新書」など、自分があまり読んでいないレーベルの評価は参考になった)。

 因みに、朝日新聞の記事(asahi.com 2009年3月12日)によると、出版業界では、「岩波新書」「中公新書」「講談社現代新書」が「新書御三家」と呼ばれてきたが、これに対し、94年創刊の「ちくま新書」創刊以降に生まれたのが「新御三家」で、「新潮新書」「光文社新書」「ちくま新書」をそう呼ぶ人もいれば、「ちくま新書」の代わりに「文春新書」「集英社新書」を挙げる人もいるそうです。「新潮新書」以降も「朝日新書」「幻冬舎新書」など新規参入が続いたわけで(下図・asahi.comより)、これらだけ数えあげると、ちょうど「新書10傑」みたいな感じになるのかなあ(「朝日」は身内だから挙げておかないと―というのもあるのだろうけれど。「朝日新書」の代わりに「10傑」に入るものがあるとすれば「PHP新書」か)。

 朝日の記事によれば、新書は「百花繚乱時代」でブームであるには違いないけれど、これはハードカバー単行本が売れていないという出版不況の裏返しであるとの見方もあるようです。また、同記事では、「講談社現代新書」は岩波より内容が軟らかいという立ち位置でやってきたものの、更に軟らかい「新御三家」が出現したため、自分立ちの位置が見えなくなった―と、講談社現代新書の出版部長自身が述べています。

《読書MEMO》
新書ブーム.jpgPart III 新書レーベルめった斬り! 小見出し抜粋
新書スタイルはここから生まれた「岩波新書」
じっくりと時間をかけて仕上げる「中公新書」
社会派老舗の風格「ちくま新書」
目の付け所が光る「光文社新書」
新書ブームをつくった「新潮新書」
クリーンヒット率の高い「幻冬舎新書」
節操のなさが強みでもある「PHP新書」
すぐれた海外翻訳モノ「ハヤカワ新書juice」
科学系新書の元祖「ブルーバックス」
カラーと図版の勝利「サイエンス・アイ新書」
ハズレ率の驚異的な低さ「DOJIN選書」
右寄りと左寄りで好対照「集英社新書」「文春新書」
コンセプトが迷走?「講談社現代新書」「講談社+α新書」 
事情はわかるが紛らわしい「角川oneテーマ21」「角川SSC新書」
大人こそ読みたい「岩波ジュニア新書」「ちくまプリマー新書」
元祖「ライフハック本」「宝島新書」 
かくも楽しきニッポン文化「平凡社新書」
実用知識をユニークな構成で見せる「新書y」
スゴ本、ダメ本 玉石混淆の「青春新書インテリジェンス」
ルポが光る、新聞社系新書「朝日新書」
エコとエロが共存する「ベスト新書」
IT好きにうれしいラインナップ「アスキー新書」
派手なグループの地味なレーベル「ソフトバンク新書」
今後が楽しみ「マイコミ新書」


(左図)asahi.comより

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