「●教育」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【1315】 瀬川 松子 『中学受験の失敗学』
平凡でも「ルール」として教え込むことで得られる効果。「ハリ・ポタ」のクラス間の点取り合戦みたいな感じも。
『あたりまえだけど、とても大切なこと』(2004/06 草思社) ロン・クラーク氏
著者は大学を出て世界中を放浪した後、たまたま'95年に小学校教師となってハーレムの問題児が多い学級を担当しますが、学級を立て直すために、祖母から教わった礼儀作法をルールにして生徒たちに教え込みます。
この本にあるのはその50のルールなのですが、のっけから「大人の質問には礼儀正しく答えよう」といった平凡なものが出てきます。
これが最も重要なルール、ということですが、その「効果」(成果?)が凄くて、ニューヨーク市一帯から応募がある募集者数30の難関中学校の面接試験に、著者のクラスから12人受けて全員が合格したという。
こうした調子で、
「口をふさいで咳をしよう」
「何かもらったら3秒以内にお礼を言おう」
「だれかとぶつかったらあやまろう」
といったルールが、具体例やその「効果」(成果)とともに紹介されています。
著者の教室の子どもたちは、態度も変わり、成績も全米トップクラスとなり、地域貢献プロジェクトを実施し、ついにホワイトハウスにクラス全員が招かれるという...(少しアメリカン・ドリーム的な描き方ではあるのですが)。
日本にもそうした落ちこぼれ学級を活力と秩序ある学級に蘇らせた先生の話はありますが、放っておいても身につくような平凡なことでも(これが実際には身につかなかったりする)「ルール」として教え込むというところが著者の特徴でしょうか。
もちろん素早く態度で示す判断力、行動力も必要だし、継続する意志力も大切。こうなってくると教師個人の資質的なものを感じます。
著者は'00年に「全米最優秀教師賞」を受賞したそうですが、これは国ではなく民間(ディズニー)で定めた賞です。
日本でも民間で決めるならばあってもいいかなと思いますが(家庭教師派遣会社などで似たようなものがありますが、ほとんど販促用の人気投票みたいなものになっている)、まずムリでしょう。
また一方で、著者の教育法は旧来の「アメとムチ」方式に過ぎないのではないかという批判も米国ではあるようです。
自分自身もそのことは大いに感じ、自分が「ハリー・ポッター」シリーズのクラス間の点取り合戦的なところが好きになれない理由と同じような要素も、この本にはあると...。
でも、学校でカリキュラムをこなすことだけに汲々としながら授業をしている教師も多いわけで、家庭の役割か学校の役割かを問う前に、子どものために考えてみなければならないことも多いと思いました。