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先端科学からオウム真理教まで。さらっと読める「科学」とその現況。
『脳が語る科学―養老孟司対談集』 『脳が語る身体―養老孟司対談集』
'99年に同時出版された対談集『脳が語る身体』と対になっています。両方とも対談相手は学者が多いのですが、さらっと読め、かつ先端科学からオウム真理教やもののけ姫まで、広汎な話題で楽しませてくれます。
鼎談も一部あり、佐藤文雄氏(物理学)が地震は予知できないと言えば、中村雄二郎氏(哲学)がアメリカではそれが常識である、と。ではなぜ日本人はできると思っているのかといったところから、「科学する」ということと「科学」の置かれている現況に踏み込んでいきます。
確かに、地震予知が高い精度で可能ならば、今度はその結果に対する対応とかが大変なのでしょう。大地震発生後の地震予知連絡会の会見は、結局自分たちにも先のことはわからないと言っているようにも聞こえるし、日本でも予め、地震予知の困難さを暗示しているようにも思えますが...(アメリカの場合は、そんな分からないことに使う予算があるのならば、その分、竜巻の予報(予知ではない)の方に回すのだろう)。
安西祐一郎氏(認知科学)がロボットに苦手なことは何かを通して語る人工知能の話、多田富雄氏(免疫学)の人間観、個とは行動様式であるという話と、養老氏の「現実」とはバーチャルであるという話は面白かったです。
「尊師が水中に1時間いるので立ち会ってください」と医学生(たぶん東大生)に言われた養老氏の話には、学校で教える「科学」って何なの?と考えさせられます。
姉妹版『脳が語る身体』もお薦めです。
《読書MEMO》
●佐藤文隆...地震予知が不可能なことは皆知っている。わかったら後が大変。
●中村雄二郎...アメリカでは地震予知は不可能と言いきっている。
●安西祐一郎...ロボットにとって難しいことは「推論」(コップを取って来いの例)
●養老...麻原が水の中に1時間いるのに立ち会って下さいと医学生に言われた
●多田富雄...「独座観念型」と「キーボード拡散型」
●養老...人間の考えている現実はすべてバーチャル・リアリティ(東京に住んでいれば自然はどこにもない、脳をいじれば現実は変わる)
●養老...高齢化問題は田舎では以前から起きている