【016】 △ 城 繁幸 『日本型「成果主義」の可能性 (2005/04 東洋経済新報社) ★★☆

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成果主義、目標管理、人事考課の混同が見られるのが残念。

日本型「成果主義」の可能性5.jpg日本型「成果主義」の可能性.jpg   内側.jpg    城 繁幸氏.jpg 城 繁幸 氏 
日本型「成果主義」の可能性』〔'05年〕               『内側から見た富士通』〔'04年〕

 べストセラーとなった『内側から見た富士通』('04年/光文社ペーパーバックス)の著者による第2弾で、出版元を変え、ペーパーバックスからハードカバーになりましたが、結論から言えば、前作ほど内容の濃さを感じませんでした。
 前半部分の前提となっている「日本企業の成果主義=目標管理」という見方はかなり表面的ではないかと思えました。
 「数値目標は一般社員にはなじまない」とする考え方にも、目標管理=人事考課という拡散的解釈が見られます(目標と評価をどうしてこう一緒くたにして論じてしまうのだろうか)。

 それでも一応は著者なりの立場で、一般社員の目標は数値目標にこだわらずチーム目標に対する個人の貢献度をアナログで評価すべきだなどの提案をしていますが、以前からそうしている企業は結構多いのではないでしょうか。
 管理者を評価される立場に立たせよ、「社内公募制度」や「FA制度」を設けよ、などといった主張も必ずしも目新しいものではなく、もう少し明確にオリジナリティのある著者の結論を示して欲しかったところですが、「可能性」というモヤっとしたタイトルからも察せられるとおり、「成果主義論争に終止符を打つ!」という帯の惹句に答えきれていない気がしました(自分が期待しすぎたか?)。

 「成果主義」というのは「業績・貢献度に基づく評価・報酬制度」であり、処遇制度の一方向性に過ぎないと思います。
 当然、良い成果主義もあれば、良くない(作り方や使い方の拙い)成果主義もあるでしょう。
 著者は実務経験者だけあって、サブシステムに過ぎない「成果主義」を、イデオロギーや理念のように論じる類書の轍は、ある程度踏まずにすんでいますが、本書において、日本型「成果主義」の体系的な展開が充分になされているとは思えませんでした。

 ベストセラーを出した後でもあり、「成果主義論争に終止符を打つ!」という帯の方が先に出来上がっていて、原稿の方は何かまとまりきらないうちに出版してしまったのかと勘繰りたくもなるような内容にも思えました。

《読書MEMO》
●「日本企業の成果主義=目標管理制度」(62p)
●目標管理制度が機能するための前提...1.目標が数値目標化できる/2.目標のハードルが同じ高さ/3.常に目標が現状にマッチしている/ 4.評価の際、達成度だけで絶対評価が可能→これらをすべて満たすには無理がある(75p)→最終的には相対評価になってしまう(90p)→目標の低レベル化と評価のインフレ(92p)
●数値目標は一般社員にはなじまない(132p)

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