【1559】 ○ くすのき しげのり(作)/石井 聖岳(絵) 『おこだでませんように (2008/06 小学館) ★★★★

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子供に対する「気づき」と「行動」。シンプルなわりには、意外と大人向けかも。

おこだでませんように.jpg 『おこだでませんように』(2008/06 小学館)

 妹を泣かせて怒られて、女の子を驚かせて怒られて、友達に先に手を出して怒られて、お母さんや先生にいつも怒られてばかりいる「ぼく」は、学校の七夕祭りで短冊にある言葉を書く―。

 まず、単純にハッピーエンドであって、いいなあと思わせる話。男の子の立場や目線で書いてあるのが良く、また、話がたいへんシンプルなのがいいです。
 2008(平成20)年6月刊行であり、そう古くはない作品ですが、こういうシンプルなのが後々にまで残るのだろうなあ。でも、奥は深いかも。

 ポイントは男の書いた短冊を見た担任の先生の反応で、この先生の「気づき」とその後の「行動」が無ければ、この"いい話"は成り立たず、こういうのって個人の持つ"気づく力"と"実行力"に拠るなあと(この話の中の担任の先生が涙したように、ベースとなるのは"センシビリティ"だと思うが)。

 それらが無ければ、この男の子は単なる「問題児」として見られ、また、その後も様々な場でそのように扱われ続けていくのだろうなあ。

 問題を起こしがちな子を「母子家庭だから」とか後付けの理由を前にもってきて、この子は「問題児」であるとアプリオリに規定してしまうことの怖さも感じます(家族写真に父親が写っていないのは、やや"説明的"か)。

 子供に読み聞かせてもいいけれど、意外と読み聞かせする側(大人)向けかも。シンプルなわりには。

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