【785】 △ 豊田 有恒 『古代"日本"はどう誕生したか―封印されてきた古代史の謎』 (1999/07 青春出版社プレイブックス) ★★☆

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個人的推測で書かれている部分が多い。"自由訳「魏志倭人伝」"がいい。

古代日本はどう誕生したか プレイブックス.jpg 5古代日本はどう誕生したか.jpg  豊田有恒氏.jpg 豊田有恒 氏
古代"日本"はどう誕生したか―封印されてきた古代史の謎』〔'99年〕

 著者の本は最近あまり読んでいませんが、昔は100%SF作家だった―と思う。それが、古代史研究の方に傾倒し(この頃までは何冊か読んでいた)、その後、韓国問題研究へとスライド、最初は親韓派だったけれど、いつの間にか嫌韓(厭韓)派になっている...(「古代史」物もまだ書いていますが)。

吉野ヶ里遺跡.jpg三内丸山遺跡.jpg もともと学問的進路(慶大医学部中退)や職業選択(手塚治虫作品の脚本作家だった)においても紆余曲折があった人で(「W3事件」参照)、いろいろ周辺事情もあったようですが、自分の興味や嗜好に素直だとも言えるのかも。

 80年代終わりから90年代にかけて三内丸山遺跡(縄文文化・青森市/写真左)や吉野ヶ里遺跡(弥生文化・佐賀県神埼郡/写真右)の発掘調査が進み、90年代後半にかけて古代史ブームが起きましたが、著者もそうしたブームを後押しした一人。
 ただし、著者に言わせれば、戦後の古代史研究は、戦前の皇国史観に対する過剰反省から抜け出せておらず、左翼研究者の自虐史観によって歪められているということで、それが本書のサブタイトル"封印されてきた古代史"ということに繋がるようです。

 縄文時代の始まりが5千年ぐらい引き上げられ1万6,500年前とされたことから始まり(これは当時、既に「新たな定説」となっていた)、古代中国における「倭人」の位置づけの高さ、日本語のオリジナリティ、日本神話のイマジネーションの高さ、古墳文化の素晴らしさなど、古代日本文化に対する礼賛が続きます。
 話題は広いけれども、個人的推測で書かれている部分も多く、大学教授ではあるけれども何となく在野の香りがする人。ただし、本書は読み物としては、歴史の〈いろいろな見方〉をわかりやすく示していると思います(〈新事実〉ではなく)。

 本書で一番気に入ったのは、「魏志倭人伝」で邪馬台国について書かれている箇所(漢字2千字足らず)を「ですます調」で現代語訳している部分で(本書で12ページ相当に膨らんでいる)、紀元3世紀の邪馬台国人の姿や風習が鮮やかに浮かび上がってきます。
 "自由訳「魏志倭人伝」"といったところか。やっぱり、作家だなあ。

豊田有恒.jpg 豊田有恒 2023年11月28日食道がんのため死去(12月5日、公式SNSで発表)。85歳。作家、SF作家、推理作家、翻訳家、脚本家、評論家。
アニメ「エイトマン」で1963年末に脚本家デビュー。その後「宇宙戦艦ヤマトシリーズ」の原案、設定にも携わる。

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This page contains a single entry by wada published on 2007年11月25日 22:08.

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