【688】 ○ Marek Veronika 『Lucas und der Loewe』 (2006/10 Schenk Verlag Gmbh)《マレーク・ベロニカ (とくなが やすもと:訳) 『ラチとらいおん』 (1965/07 福音館書店)》 ★★★★

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コーチングによって成長していく少年。「勇気」と利他的行動の関係。

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Lucas und der Loewe』(ドイツ語)『ラチとらいおん』 〔'65年〕  Marek Veronika (略歴下記)

 1956年発表のハンガリーの絵本作家 Marek Veronika (マレーク・ベロニカ)の作品。
 
ラチとらいおん2.jpg  「せかいじゅうで いちばん よわむし」の男の子ラチは、将来は飛行士になりたいくせに、犬は怖いし、暗い部屋も怖い、友だちさえも怖いといった有様で、そんな臆病者のラチのもとに、ある日小さくて赤い「らいおん」が現れる―。

 ラチ少年が「らいおん」の力を借りて成長していく話ですが、絵もストーリーもすごくシンプルなのが良く、それでいて「らいおん」とは何だったのかがちゃんと思い当たるようになっています。

勇気」を持って欲しいとは親であれば誰でも思うことですが、この絵本では、ラチは「らいおん」の指導(コーチング)のもと"体力づくり"的なこともして「自信」をつけながらも、実際に彼が「勇気」を身につけるのは、社会との関わり、利他的行動における達成感を通じてです。

 子供がコーチングを通じてセルフ・エフィカシー(自己効力感)を高めていくプロセスがシンプルに描かれているとともに、「強くなる」ということが社会性をベースにしていなければ、その自己効力感は本当の意味での「勇気」には繋がっていかないということいがスンナリ理解できます。
 たとえ自らのプライドを守るために「強くなりたい」というふうに動機づけられたものであったとしても、社会性をベースにした行動であれば、他者から見ればそれは「勇気」ある行動として評価され、より高い水準の自己効力感にも繋がっていくものだということを、改めて思わせます。

 作者のマレーク・ベロニカは、1937年・ブダペスト生まれの女性絵本作家で、18歳で絵本作家としてデビューしており、『ラチとライオン』は彼女が19歳の時の作品。
 その後も作家活動を続け、『くさのなかのキップコップ』('05年/風濤社)など近作も日本で出版されており、来日もしています。

 本書は子供に読んであげるなら4才ぐらいからで、子供が自分で読むなら小学低学年からのレベルだそうですが、ラストの「らいおん」の置き手紙には、大人の方が先に感動してしまったりして...。 
 逆に幼い子どもは、この話を読んで聞かせると、純粋に"悲しい結末"というふうにとることもあるようで、それはそれで、今の段階ではいいんだと思います。
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Marek Veronika.jpgMarek Veronika .jpgマクーレ・ベロニカ (Marek Veronika)
1937年ハンガリーの首都ブタベストに生まれる。幼少時より文章・絵画に関心を抱き、1956年、19歳の若さで出世作となる絵本『ラチとらいおん』を発表。弱虫な少年ラチが小さなライオンと出会い、強い子供にと成長して行く様を描いたこの作品は母国ハンガリーを始め、世界中で評価され、現在に至るまで重版が続く歴史的な名作となっている。絵本作家として活躍する傍ら、文学の教師や脚本家としても才能を発揮するなどしている。

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