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本人なら自著にこんな大仰なタイトルはつけない(つけたのは宮城さん)。
吉行淳之介/宮城まり子 吉行淳之介文学館(宮城まり子が運営するねむの木学園の傍にある)
『失敗を恐れないのが若さの特権である―愛・結婚・人生 言葉の花束』(2000/03 海竜社)
吉行淳之介が没したのが'94年。まず愛人だったという大塚英子氏が『「暗室」のなかで』('95年)を、続いて同居人(パートナー?)だった宮城まり子氏が『淳之介さんのこと』('01年)、を、さらに本妻・吉行文枝氏が『淳之介の背中』('04年)を発表し、没後も賑やかです。
大塚英子『「暗室」のなかで―吉行淳之介と私が隠れた深い穴 (河出文庫)』 ['97年]/宮城まり子『淳之介さんのこと (文春文庫)』/吉行文枝『淳之介の背中』
本書は吉行淳之介のエッセイなどから愛・結婚・人生についての言葉を選んだ詞華集で、選んだのは上の3人のひとり、宮城まり子氏。彼女の『淳之介さんのこと』に先駆けて'00年出版されています。彼女が全面的に編集していて、彼女の筆による作家との思い出話もあるので、"共著"に近いくらいです(但し、相手の承諾は得てないわけだが)。
吉行淳之介のエッセイの味わいが凝縮されていて、彼女が作家のよき理解者であったことが窺えるとともに、やはり彼女のフィルターがかかって、ちょっと"濾過"されちゃったかなと感じる面も多々ありました(少なくとも本人なら自著にこんな大仰なタイトルはつけないでしょう)。また、一部ですが、前後の脈絡のなかで捉えないと誤解を招きそうな文章もあります。
ただ、吉行淳之介という人は、フェニミズムが台頭する中で誤解されることも多い作家なので、こうしてその言葉を残していくということ自体はいいことかなと思います(本書の場合、"編集者"の作家との関係における立場の微妙さはありますが)。
《読書MEMO》
●本当の才能というものは必ず開花する(青春放浪記)
●ゴシップも選択さえ良ければ、人間性の核心に達する十分な手がかりになる(人間教室)
●権威に弱いというのは教養・教育とは関係ない
●僕は雑踏を愛し、都会を愛している。死ぬまで、花鳥風月の心境にはなれそうもない(軽薄派の発想)
●女の神経が材木だとすると男は絹糸である(無作法戦士)
●結婚とは忍耐ですよ(軽薄のすすめ)
●女は自分が世界の中心にいると考えている(女をめぐる断想)
●持病というものは飼いならして趣味にする...
宮城まり子(本名:本目真理子)2020年2月21日午前6時55分、悪性リンパ腫のため東京都内の病院で死去。93歳。「ガード下の靴みがき」などのヒット曲で知られる歌手で俳優。肢体の不自由な子どもたちの養護施設「ねむの木学園」を設立して園長を務めた。