「●人事・賃金制度」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【028】 藤原 久嗣 『職務・成果主義による新賃金・人事制度改革マニュアル』
リサーチャー的視点で、先駆となった人事賃金制度をわかりやすく紹介。
『これからの人事がわかる本―ベアも定期昇給もなくなる!?正社員がいらなくなる!? (PHPビジネス選書)』PHP研究所
本書前書きにもありますが、人事制度の中でも特に賃金制度(報酬政策)の紹介に重点を置いて書かれています。
読者層として若手・中堅サラリーマンを意識したということで、1項目3ページ単位で1つの話題をまとめるよう工夫されていて、専門用語の使用を最小限に抑えた文章と見やすい図表により分かりやすい内容となっています。
人事賃金制度の新しい動きを追うだけでなく、「成果主義とのつきあい方」という章を設け、その受け止め方を考えるヒントを与えていますが、同調ないし反発する前にまず分析ありきという冷静なスタンスです。
'00年の出版ですが、当時話題となった
◆〈日興證券〉〈住友商事〉〈博報堂〉の賃金制度
◆〈デンソー〉や〈ぴあ〉の評価制度
◆〈パソナ〉のカフェテリアプラン
◆〈ベネッセ〉の自己選択型能力開発制度
◆〈コニカ〉のポイント制退職金制度
◆〈コマツ〉の退職金前払い制度
などが要点を絞って紹介されていて、その後これら制度に追随する企業が幾つか出たことを見ても、人事賃金制度の先行事例に対する著者の慧眼が窺えるかと思います。
そうした制度やトレンドの良し悪し、つまり価値判断にはさほど踏み込まないので、何だか立場がハッキリしないなあという印象を持つ読者はいるかも知れませんが、新任の役員や人事担当者が人事・賃金制度の動向を大まかに把握したいという場合などには、各制度のポイントを押さえた良い本だと思いました。
著者は、総合労働研究所勤務を経て'89年に独立、以後、雇用労働分野に関する取材記事・論説記事を「労政時報」「賃金実務」等の専門誌に寄稿する傍ら、調査・評論・講演活動を行っている人ですが、「PANフィールド・リサーチ」の所長(本書執筆当時)ということで(「PAN」は「鍋」、「フィールド」は「田」かからとったと著者の講演で聞いた)、その基本的立場は、人事制度のリサーチャー、トレンドウォッチャーであるとみてよいかと思います。
《読書MEMO》
●日経連の雇用ポートフォリオ
1長期蓄積能力活用型グループ
2高度専門能力活用型グループ
3雇用柔軟型グループ
●複数賃率表(洗い替え方式)...毎年1号昇号するが同一レンジ内では一定号までしかなく、上限にいくとSからDの範囲で評価によっての塗り替えのみ(62p)
●賃金制度の3つのタイプ...職能給・職務給・成果給(または業績給)(79p)
●主な事例...日興證券・博報堂・ぴあ(ぴあアイデンティティーバリュー)・ベネッセ(能力開発ポイント)・コマツ