【3049】 ○ 海堂 尊 『ブラックペアン1988 (2007/09 講談社) ★★★★

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面白かった。なぜ「黒いペアン(鉗子)」なのか最後に明かされるところが鮮やか。

ブラックペアン1988 2007.jpgブラックペアン1988 文庫 上.jpg ブラックペアン1988 文庫下.jpg ブラックペアン1988 文庫 新装.jpg
ブラックペアン1988』/『ブラックペアン1988(上) (講談社文庫)』『ブラックペアン1988(下) (講談社文庫)』/『新装版 ブラックペアン1988 (講談社文庫)

ブラックペアン1988 文庫 上下.jpg 医師国家試験受験後、合否判定を待ちつつ東城大学医学部付属病院の研修医となった世良雅志。佐伯清剛教授を頂点とする総合外科学教室(通称・佐伯外科)に入局した世良は、入局から3日目、帝華大学からやってきた新任の講師・高階権太と遭遇する。高階は食道自動吻合器「スナイプAZ1988」を引っ提げ、手術の在り方、若手の育成に一石を投じて波紋を呼び、総合外科学教室の秩序を乱す言動と相まって周囲からの反感を買っていた。また「佐伯外科」には「オペ室の悪魔」と呼ばれる万年ヒラ医局員の渡海征司郎がおり、世良は高階や渡海との関わりの中で医師として成長していく―。

 2007年刊行で、作者が「バブル三部作」としているシリーズの第1作。舞台はタイトルの通り、1988年の大学病院の医局。大学病院に自動手術器である「スナイプ」を引っ提げやってきた高階講師と、天才外科医・渡海との対決かなと思って、ドラマの「ドクターX〜外科医・大門未知子〜」みたいなパターンの奔りかなと思ったら(最も、天才外科医の出てくるパターンは山崎豊子の『白い巨塔』の頃からあるが)、話が予想外の方に行ってなかなか面白かったです。

 文庫巻末で作者と対談している吉川晃司(作者が「東城大学シリーズ」としている方の第1作『チーム・バチスタの栄光』('06年/宝島社)の映画化作品('09年/東宝)に出演した)が「『バチスタ』より『ブラックペアン』の方が面白いんじゃないかな」と言っているくらいです。

 世良が入局してから半年後、佐伯が病院長選挙のパフォーマンスのために北海道での学会に出席中、手薄となった病院では渡海と佐伯の過去の因縁が明らかになる事件が起こる―。

 ああ、これって渡海の佐伯教授に対する復讐劇だったのかなと思いましたが、最後にもう一捻りありました。なぜ「黒いペアン(鉗子)」なのかというとカーボン製なわけで、そのこと自体は予測がつかなくはないですが、それが何のためにそうなのかが最後に明かされるのは鮮やか。ただ、勧善懲悪的なカタルシスを期待した人には"肩透かし"を喰った感があったかもしれません。

dk_syujyutsu_08.jpg 「ブラックペアン』のタイトルで、2018年4月から6月までTBS「日曜劇場」枠で10回にわたって放送され、主演は日曜劇場で初主演の嵐の二宮和也でした。世良の役かと思ったら渡海役でした。個人的には、佐伯教授を演じた内野聖陽の方が渡海役に向いていて、佐伯教授は、かつて「白い巨塔」の映画版でもドラマ版でも「東教授」を演じた中村伸郎みたいなタイプの役者がいいのではないかと思いましたが、今そういう人はいないか...。高階講師などは片岡愛之助などが個人的イメージですが、ドラマでは小泉孝太郎で、全体に配役が若かったようです(二宮和也や小泉孝太郎は医師に見えたのかなあ)。

日曜劇場『ブラックペアン』.jpg ドラマの方は観てはいないですが、時代が今に置き変わっていて、物語で佐伯教授が「おもちゃ」と日曜劇場『ブラックペアン』2.jpg呼んだ食道自動吻合器「スナイプ」に代わって登場したのが、「ダーウィン」(ドラマ内の名称)という心臓僧帽弁置日曜劇場『ブラックペアン』3.jpg換器で、これは所謂「手術支援ロボット」であり、ミリ単位の精密な操作が可能なものです。このロボットは、現実の医療現場でもすでに活躍していて、正式名称は「ダビンチ」(da Vinci)といい、前立腺がんなどですでに多くのダビンチ手術が行われています。大病院でも1台くらいしかない高価なロボットですが、ドラマでは医療機関から本物のダビンチを借り、セット持ち込みで撮影し、「ダビンチがドラマ史上初めて登場」と話題になったようです(作中では米粒に文字を書くシーンなども展開されたとのこと)。

ダヴィンチ tavi.jpg 「ダビンチ手術」は、近年では、 指揮者の小澤征爾なども受けた経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI=タビ)と並んで、最先端医療の目玉とされているようです(2016年にタレントの西川きよしが「ダビンチ」を使って前立腺を取り除く手術をしている)。そして、「TAVI」もそうですが、2018年から多くの術目で保険適用となった「ダビンチ」についても「ロボット手術数」として施術数を競い合ってる病院もあるようです(「TAVI」も2013年から保険適用になっている)。

 でも、癌が見つかった人で、手術することになった際に、医者からいきなり「ロボットにしますか、どうしますか」と訊かれても(これ、最近よくあることらしい)、予備知識の無い人は返事に窮するのではないかなあ。

【2009年文庫化[講談社文庫(上・下)]/2012年再文庫化[講談社文庫(『新装版 ブラックペアン1988』全1冊)]】

      

    




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