【2985】 ○ 森崎 東 (原作:村松友視) 「時代屋の女房 (1983/03 松竹) ★★★☆ (○ 村松 友視 『時代屋の女房 (1982/08 角川書店) ★★★★)

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どろっとした映像化作品になりかけているところを透明感を保たせている夏目雅子。

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あの頃映画 the BEST 松竹ブルーレイ・コレクション 時代屋の女房 [Blu-ray]」夏目雅子/渡瀬恒彦

「時代屋の女房」2.jpg 35歳独身の安さん(渡瀬恒彦)は大井町で「時代屋」という骨董屋を営んでいる。夏のある日、野良猫をかかえ、銀色の日傘をさした、真弓(夏目雅子)という女がやって来ると、そのまま店に居ついてしまう。一緒に暮すようになっても、安さ「時代屋の女房」0.jpgんは、真弓がどういう過去を持っているか訊こうともしない。そんな真弓がひょいと家を出ていくと、暫く戻ってこない。喫茶店サンライズの独身のマスター(津川雅彦)や「時代屋の女房」1.jpgクリニーング屋の今井さん夫婦(大坂志郎・初井言栄)、飲み屋とん吉の夫婦(藤木悠・藤田弓子)らが親身になって心配していると、真弓は何事も無かったかのように帰って来る。闇屋育ちのマスターは、カレーライス屋、洋品店、レコード屋などをやった末夏目雅子 『 時代屋の女房 』.jpgに今の店を開き、別れた女房と年頃の娘に毎月仕送りをしながらも、店の女の子に手をつけ、今はユキちゃん(中山貴美子)とデキているが、その彼女は、同じ店のバーテン、渡辺(趙方豪)と愛し合っている。今井さんの奥さんが売りにきた古いトランクから昭和11年2月26日の日付の上野-東京間の古切符が出てきた。47年前、今井さんが人妻と駆け落ちしようとして連れ戻され、使わなかった切符で、青春の思い出を蘇らせる今井さん。真弓がいない間に、安さんは、どこo時代屋の女房.jpgか真弓に似ている美郷(夏目雅子、二役)という女と知り合い、関係を結ぶ。東京の孤独で華やいだ暮しを畳んで、彼女は東北の郷里に戻って結婚しようとしており、その寂しさの中で、安さんと出会ったのだ。マスターは遊びが過ぎて店を閉める羽目となり、ユキちゃんと渡辺クンに店を引き取ってもらい、小樽の旧友を訪ねて旅に出ることに。安さんも、岩手で覗きからくりの売り物があると聞き、一緒に車で旅に出る。安さんが店に戻った翌日、真弓が初めて現れたときと同じように、冬にもかかわらず日傘をさして帰ってくる。その差し上げた手には、安さんが欲しがっていた南部鉄瓶が―。
時代屋の女房 (1982年)
I『時代屋の女房』.jpg 1983年公開の森崎東(1927-2020)監督作で、原作は村松友視の1982(昭和57)年上半期・第87回「直木賞」受賞作。作者は「セミ・ファイナル」「泪橋」に次ぐ3度目の候補での受賞で、単行本『時代屋の女房』('57年/角川書店)には「時代屋の女房」と「泪橋」が収録されています。

 「泪橋」の方も'83年に黒木和雄監督、渡瀬恒彦主演で映画化されていますが、そちらは未見です(原作者が脚本に噛んでいる)。原作の方は、大井町ではなく鈴ヶ森が舞台ですが、何となく「時代屋の女房」に似た雰囲気もあって、直木賞選考の時も、選考委員のうち強く推したのが山口瞳、五木寛之の両委員であったという点で共通します。「泪橋」の時は受賞に至りませんでしたが、「時代屋の女房」の方が完成度が高く、より受賞作に相応しいように思われます(因みに、「泪橋」が受賞を逃したときは、つかこうへい『蒲田行進曲』が受賞し、「時代屋の女房」が受賞したときは深田祐介『炎熱商人』と同時受賞となった)。

友視 直木賞受賞.jpg 作者はのこれら一連の小説により、「新しい都会派作家の登場」として注目されましたが、「時代屋の女房」で言えば、安さんと真弓の、お互いに相手の出自を探索しない、適度な距離感を保った関係というのが「都会的」という風に受け止められたのかなあと思いました。

 これを、どちらかというと"こってり系"の"ごった煮"と言うか、どろっとした作風の森崎東監督がどう撮るか(こちらは原作者が脚本に噛んでいない)――結局、物語の舞台に近い大井武蔵野館などで80年代によく上映されていたものの、何となく観に行かずじまいで、だいぶ後になってビデオで観ましたが、う~ん、やっぱり、という感じ。最近、劇場で見直しましたが、その印象は変わらずです。

「時代屋の女房」5.jpg 安さんをはじめ、登場人物にいろんなものを背負わせすぎて、原作にない登場人物も多くあり(朝丘雪路や沖田浩之が演じた役どころは原作にはない)、やっぱり"こってり系""ごった煮"になっているような...。真弓の行き先について映画では一つの解釈を入れていたなあ(原作でも真弓はもちろん帰ってくるが、どこへ行ったかはわからず、特に何か持って帰ってきたわけではない)。原作における「カーリー・ヘヤの女」が、映画における「美郷」かと思いますが、彼女に関するエピソードはほとんど映画のオリジナル乃至は「泪橋」からもってきているかで、これを夏目雅子に二役でやらせたのは、夏目雅子の演技力をより引き出そうという狙いだったのでしょうか(森崎東監督作品には「p://hurec.bz/mt/archives/2021/01/2986_198409_198505.html">ロケーション」('84年)における大楠道代の役など一人二役がよくあるが、これが最初ではないか)。

「時代屋の女房」3.jpg 「都会派」とは言い難いどろっとした作品になりそうなところを、明るい透明感でもって救い、原作との雰囲気の乖離を防いでいるのは、まさに夏目雅子のお陰であり、この作品の2年後にこの世を去ったことを思うと、尚更その思いは増します。この作品がいいという人の多くが、この作品での夏目雅子を絶賛しますが、「夏目雅子がいい」という点では同感です。このころの森崎東監督の中でも、透明感の高い、特殊なポジションにある作品ではないでしょうか。
    
「時代屋の女房」4.jpg「時代屋の女房」●制作年:1983年●監督:森崎東●製作:杉崎重美/中川完治●脚本:荒井晴彦/長尾啓司●撮影:竹村博●音楽:木森敏之●原作:村松友視●時間:97分●出演:渡瀬恒彦/夏目雅子/津川雅彦/中山貴美子/趙方豪/大坂志郎/初井言栄/藤木悠/藤田弓子/朝丘雪路/沖田浩之/平田満/坂野比呂志/名古屋章●公時代屋の女房 津川雅彦.jpg開:1983/03●配給:松竹●最初に観た場所(再見):北千住・シネマブルースタジオ(20-12-17)(評価:★★★☆)
津川雅彦(喫茶店サンライズの独身マスター)

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和田泰明

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