【2711】 ○ ポール・J・ザック (白川部君江:訳) 『TRUST FACTOR トラスト・ファクター―最強の組織をつくる新しいマネジメント』 (2017/11 キノブックス) ★★★☆

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「オキシトシン」は"?"だったが、組織信頼向上の「8要因」は多くの事例を通して解説されていた。

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TRUST FACTOR トラスト・ファクター~最強の組織をつくる新しいマネジメント』(2017/11 キノブックス)

 本書の著者は神経経済学者であり、神経経済学とは、人間が決断をするときの脳活動を測定することで、なぜそのような行動をとるのかを説明する学問であるとのことです。著者によれば、人間は信頼されると脳内で神経伝達物資であるオキシトシン(信頼ホルモン)を合成し、受けた信頼に応えようとするとのことで、そうしたオキシトシンの測定から、信頼や共感が組織において人間の関係性を良好にし、コミュニケーションを円滑にし、イノベーションが実現しやすくし、各種のパフォーマンスも向上させ、組織を成長させるということが分かってきたとしています。

 一方、オキシトシン(の分泌や働き)を抑制する因子としてテストステロンなどがあり、人間の脳内でテストステロンとオキシトシンのせめぎ合いがあって、テストロンが多いと人間は利己的になり、権利意識も強まるとのことです。本書の目的は、テストステロンから得られる高いモチベーションや意欲と、オキシトシンを分泌することによる協調とチームワークのバランスを見つけることであるとのことであり、つまり、人間や組織を動かす生理学的な要素に着目してその働きと功罪、バランスを考える機会を提供しているのが本書であるということです。

 第1章では、著者は、オキシトシンによって脳の神経回路が活性化される仕組みを解明し、人々の信頼を支え維持する組織文化の構築に向けた一連の実用的な方法を突き止めたとし、信頼を生むマネジメントポリシーを構成する8つの因子として、「オベーション(Ovation)」「期待(Expectation)」「委任(Yield)」「委譲(Transfer)」「オープン化(Openness)」「思いやり(Caring)」「投資(Invest)」「自然体(Natural)」を挙げ、それらの頭文字をとって、まさに「OXYTOCIN」と名付けています。そして、第2章から第9章にかけて、この信頼を上げるための要因をそれぞれ解説しています。

 それによれば、「オベーション」とは、組織の成功に貢献した人を称賛することであり、「期待」とは、同僚がグループの課題に直面した時に生じ、「委任」とは、従業員が仕事の進め方を自ら選択できるようにすることであり、「委譲」とは、従業員が自らの仕事をデザインし、自己管理することを可能にするものであるとしています。さらに、「オープン化」とは、従業員とともに情報を広く共有することであり、「思いやり」は、同僚との人間関係を意図的に構築することであり、組織は従業員に一人の人間として成長してもらうために「投資」し、誠実で謙虚なリーダーがいる組織は、従業員が「自然体」でいられるとしています。そして、これらの実現が組織の信頼に寄与した例を数多く紹介しています。

 第10章では、「喜び」をもって仕事をするために重要な、信頼以外のもう1つの要素として「目標」を挙げ、「喜び」は信頼と目標意識から生まれるとしています。第11章では、信頼が業績に与える影響について述べ、信頼は働く人のモチベーションと幸福感を高め、結果的に生産性の向上、離職率の低下、慢性ストレスの減少につながるとして、改めて、信頼度の高い文化を構築することの意義を説いて、本書を締め括っています。

 冒頭で、オキシトシン効果というものが強調されていますが、その話から組織の信頼を向上させる「8つの要因」の話が出て来るまでの間が、「神経経済学で実証されている」としか説明がされていないので、単なるゴロ合わせ(?)だったのか、とやや拍子抜けしました。本書で言われている称賛や期待、委任・委譲など8つのトランス・ファクターについても、著者自身がそう述べているように、特に目新しいものではないです

 しかしながら、8つの要因がそれぞれ組織内で具体的に実現されるというのはどのようなことなのか、それによってどのような効果が生まれたのか、企業等の取り組み事例を数多く紹介しているため、まえがきにある、「『曖昧でとらえどころのないもの』を正しく理解するための技術的な入門書」であるという本書の狙いには概ね即しているように思いました。新旧さまざまな経営理論も併せて紹介されており、神経経済学(オキシトシン)は個人的には"?"でしたが、啓発書としては、まずまずではなかったかと思います。

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