【2702】 ○ グローバルタスクフォース (監修:山中英嗣) 『ドラッカー教授「現代の経営」入門 (ビジネスバイブルシリーズ)』 (2015/12 総合法令出版) ★★★★

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原著の要約本としてよくまとまっているが、むしろ原著への橋渡しとしての本か。

ドラッカー教授「現代の経営」入門.jpgドラッカー教授『現代の経営』入門 (ビジネスバイブルシリーズ)』(2015/12 総合法令出版)

 難解で分厚いビジネス名著を分かり易く解説する「ビジネスバイブル」シリーズのマイケル・ポーター『競争の戦略』、フィリップ・コトラー『マーケティング・マネジメント』に続く第3弾がこのピーター・ドラッカーの『現代の経営』ですが、このシリーズはこの第3弾で打ち止めになったようです(コトラー『マーケティング・マネジメント』は入門書なのに2分冊になっている。手間がかかりすぎたのか?)。本書は『現代の経営』上下巻(ダイヤモンド社)で550ページにわたる原著の内容を分かり易く噛み砕いて解説しています(こちらは全一冊)。

 第1部「マネジメントとは」で、ドラッカーの言う「マネジメント」と何か、『現代の経営』の序論「マネジメントの本質」に書かれていることを中心に解説し、第2部「『現代の経営』を読む」で『現代の経営』の序論から第5部、さらに結論までを含めた各部を解説、巻末第3部に「ドラッカーによる経営危険度チェック」というリストが付されています。

 第2部「『現代の経営』を読む」では、第1章「マネジメントの本質」で『現代の経営』の「序論 マネジメントの本質」(第1章・マネジメントの役割、第2章・マネジメントの仕事、第3章・マネジメントの挑戦)を、第2章「事業のマネジメント」で『現代の経営』の「第1部 事業のマネジメント」(第4章・シアーズ物語、第5章・事業とは何か、第6章・われわれの事業は何か、第7章・事業の目標、第8章・明日を予期するための手法、第9章・生産の原理)、第3章「経営管理者のマネジメント」で『現代の経営』の「第2部 経営管理者のマネジメント」(第10章・フォード物語、第11章・自己管理による目標管理、第12章・経営管理者は何をなすべきか、第13章・組織の文化、第14 章・CEOと取締役会、第15章・経営管理者の育成)、第4章「マネジメントの組織構造」で『現代の経営』の「第3部 マネジメントの組織構造」(第16章・組織の構造を選ぶ、第17章・組織の構造をつくる、第18章・小企業、大企業、成長企業)、第5章「人と仕事のマネジメント」で『現代の経営』の「第4部 人と仕事のマネジメント」(第19章・IBM物語、第20章・人を雇うということ、第21章・人事管理は破綻したか、第22章・最高の仕事のための人間組織、第23章・最高の仕事への動機づけ、第24章・経済的次元の問題、第25章・現場管理者、第26章・専門職)、第6章「経営管理者であることの意味」で『現代の経営』の「第5部 経営管理者であることの意味」(27章・優れた経営管理者の要件、28章・意思決定を行うこと、29章・明日の経営管理者)、第7章「マネジメントの責任」で『現代の経営』の「結論 マネジメントの責任」を解説しています。以上、章ナンバーと原著の部ナンバーが1つずつずれていますが、内容的には各章を忠実に網羅していることになります。

 人事パーソンにとっての読み所は(ある意味『現代の経営』のすべてが'読み所'なのだが)、第5章「人と仕事のマネジメント」で『現代の経営』の「第4部 人と仕事のマネジメント」(第19章から第26章)にあたる部分でしょうか。

 第19章「IBM物語」でIBMの事例を通してオートメーション化により人の仕事はどう変わったかを考察し、第20章「人を雇うということ」で、人を雇うということは、他の資源と違い、「人格そのものを雇う」ことであり、「個人の強み、主体性、責任、卓越性が、集団全体の強みと仕事ぶりの源泉となるよう、仕事を組織する必要がある」としています。

 第21章「人事管理は破綻したか」では、人事管理論や人間関係論が機能しないのはなぜかを分析し、基本概念は間違っていないが理念上の盲点があることを指摘しています。第22章「最高の仕事のための人間組織」では、チームのメンバー一人ひとりが、チーム全体のニーズに最も合うように、それぞれ自らの作業を配置しなければならないとしています。第23章「最高の仕事への動機づけ」では、外からの動機づけでなく、内からの動機づけを行う必要があるとし、「正しい配置」「仕事の高い基準」「自己管理に必要な情報」「マネジメント的視点を持たせる機会」の4つを企業は提供していかねばならないとしています。

 第24章「経済的次元の問題」では、経済的な報酬についての不満は、仕事に対する阻害要因となるとして、企業にとっての継続的に人を雇い続けるための雇用賃金プランの重要性を説き、第25章「現場管理者」では、現場管理者に求められるものは何かを纏めています。第26章「専門職」では、「彼ら(ここではスペシャリストの意味で使っている)は所属する部や課ではなく、彼ら自身の持つ仕事に責任を持つ」という点で経営管理者(マネジャー)とは異なっているとし、専門職を生産的な存在とするための5つの要件を掲げています。

 勿論これらの他にも読み所はあり、「目標管理」ということ言い始めたのもこの『現代の経営』であれば、「ナレッジワーカー(知識労働者)」についても同様です。

 本書は、あたかも逐条訳であるかのように原典に忠実に纏められていて、太字など用いてポイントが分かり易く要約されています。一方で、必要に応じて、そうしたことが書かれた当時の背景なども解説されていますが、『現代の経営』の初版刊行は1954年であり、60年以上も前に書かれた経営の原理原則が、今もって我々の思考に響いてくるというのは、ドラッカーの洞察力のスゴさを物語っているように思います。

 著者は『現代の経営』を、「世界最古世界最小の経営のツボ全集」と言えるとしていますが、それでも上下巻(ダイヤモンド社)で550ページにわたる元本にいきなりとりかかるのは、結構しんどいかも。本書は原著の要約本としても比較的よく纏まっていますが、むしろ、原著への橋渡しとして格好の本であるように思いました(本来はそうあるべきなんだろなあ。自分自身、なかなか読み返せないでいるけれど)。

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