【2495】 ○ 相場 英雄 『震える牛 (2012/01 小学館) ★★★★

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「警察小説×経済小説」といった感じだが、ミステリとしても面白かった。

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『震える牛』(2012/01 小学館)  WOWOW「連続ドラマW」2013年6月-7月(全5回)三上博史・吹石一恵・小林薫

 警視庁捜査一課継続捜査班の刑事・田川信一はある日、未解決の「中野駅前居酒屋強盗殺人事件」に疑問を抱き、捜査を開始する。事件は5年前に、覆面の犯人が店員から金を奪い、店にいた獣医師と暴力団関係者を殺害したというもの。初動捜査での犯人像は金目当ての外国人だった。被害者同士の面識はなく、それぞれ独りで待ち合わせ相手を待っているところだった。地道な聞き込みを重ねた田川は、食肉加工会社ミートボックスに辿り着く。さらに事件の直後、殺害された獣医師の部屋に空き巣が入り、パソコンのみが盗まれていたことが発覚、田川は、犯人の真の目的は金ではなく、2人を殺害することだったのではないかと疑念を抱く。そんな最中に田川は、ニュースサイト「ビズトゥデイ」の記者の鶴田真純と再会する。鶴田も読者から得た情報をもとに、八田富之が社長の精肉卸会社ミートボックスの食品偽装疑惑を探っているところだった。ミートボックスは加工肉をスーパーや居酒屋などに卸していて、どこよりも安い加工肉を販売することで業績を伸ばしていたが、それは食品偽装によって実現されていたものであった。牛100%を謳っておきながら、実態は豚鳥ウサギ馬、食用ネズミまで混ぜており、腐った冷凍肉を安く仕入れて腐った部分を削り、脱臭のために化学薬品で洗浄したものを挽肉にしていたのである。捜査を進める上で田川は、オックスマートがBSEの隠蔽に関わっていたことを突き止めるに至ったものの、確たる証拠が掴めずにいた。そこに何者かからの力が働き、捜査自体が頓挫してしまう―。(「Wikipedia」より)

作品紹介動画(著者インタビュー)
 2012年1月に刊行され、累計28万部のベストセラーになった作品。「警察小説×経済小説」といった感じですが、作者はもと新聞記者だけあって(専門学校卒でキーパンチャーとして時事通信社に入社、市況担当記者に欠員が生じたため記者職に転じた)、"タイムリー"な素材をうまく扱っているように思いました。ただ、モチーフがBSE問題だけだと、本書が刊行される10年以上前の2001年に問題が発覚し、世界的な騒ぎになったものの、本書刊行の3年前の2009年1月に日本最後のBSE患畜が確認された後は確認が無く、本書が出た頃にはあちこちで収束宣言が出されていて、"タイムリー"という言葉は馴染まないと言えるかも。しかしながら、そこに、大型スーパーの強引な地方進出と、それに支えられている「地方」の経済や雇用という問題を絡めて、社会の複雑な位相を浮き彫りにしている点が、経済小説として優れているように思いました。

 警視庁捜査一課継続捜査班(未解決難事件コールド・ケースを扱う部署かと思ったら、重要なコールド・ケースを扱う部署は花形部署として別にあって、同じコールド・ケースを扱うにしてもっと地味な事件を扱う部署らしい)に所属する主人公の刑事・田川信一が、地取りの鬼と言われるその名の通り、地道な地取りを経て事件の核心に少しずつ近づいていく過程には引き込まれ、警察小説としてもミステリとしても面白かったです(何の賞も獲らなかったが、テレビドラマ化された)。

 一方で、ラストは、アンチ・カタルシスの部分もあったというか、企業の寄付によって成り立っている防犯協会などが関係する警察の利権構造などが示唆されているように、結局、政治家なども絡んで最終的には巨悪にはメスが入らない―ただ、こうしたことも含め、考えさせる内容となっているように思いました(作者はノンフィクションで書きたいところをフィクションに置き換えて書いているフシもある)。

 この作者の作品には、新聞記者を主人公にした「みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎」シリーズがありますが、この小説の主人公である、警視庁刑事・田川信一を主人公にしたシリーズをスタートしてもいいのではないかと思ったら、シリーズ第2作『ガラパゴス』('16年/小学館))が出ました。読んでみたいと思います。

【2013年文庫化[小学館文庫]】

         



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This page contains a single entry by wada published on 2016年12月21日 23:09.

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