【2407】 ○ リチャード・スペンス 「名探偵ポワロ(第16話)/二重の罪」 (90年/英) (1991/01 NHK) ★★★☆ (○ リチャード・スペンス 「名探偵ポワロ(第17話)/安いマンションの事件(安アパート事件)」 (90年/英) (1991/02 NHK) ★★★☆)

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2篇ともプロット的には面白かった。あの"書割り"(第17話)の意味は?

名探偵ポワロ完全版9.jpg Double Sin(22 Jan. 1991).jpg 名探偵ポワロ/二重の罪 dvdc.jpg The Adventure of the Cheap Flat(5 Feb. 1991).jpg 名探偵ポワロ(第17話)/安いマンションの事件 dvdc.jpg
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名探偵ポワロ(第16話)/二重の罪 03.jpg 暫く面白い事件もなく、ポワロは落ち込んで引退を口走り、へイスティングスを連れて北部の海辺の町ウィットコムに観光に赴く。町にはジャップ警部の講演ポスターが貼られ、本人も姿を見せるが何故かポワロは素っ気無い。ヘイスティングスはポワロ名探偵ポワロ(第16話)/二重の罪 04.pngを、湖の町ウインダミアへのバス旅行に誘う。二人はバスの中でメアリーという娘と知り合った。彼女は、骨董屋を営む叔母から、掘り出し物の画集を得意先に届けるように頼まれていた。ポワロが気に留めたもう一人のバス客は、貧弱な口髭の青年で、これは態度が失礼だったため。観光地でヘイスティングスがメアリーとランチをしている時、メアリーは突然走り出し、自分のスーツケースをその青年が盗ろうとしていると...。しかし、これは間違いで、よく似たスーツケースだったようだ。その夜、ヘイスティングスらと同宿のホテルでメアリーは、画集が盗まれたと言って騒ぎ出す。盗難届を出し、得意先にも行くと、既に絵は何者かによって得意先に売却されていた―(第16話「二重の罪」)。

名探偵ポワロ(第16話)/二重の罪 アンチーク.jpg 「名探偵ポワロ」の第16話(第2シーズン第6話)で本国放映は1990年2月11日、本邦初放映は1991年1月22日(NHK)。原作はクリスティー文庫『教会で死んだ男』、創元推理文庫『砂に書かれた三角形』などに所収。

名探偵ポワロ(第16話)/二重の罪02.jpg このプロットには誰でもまんまと引っ掛かるのではないでしょうか。前半部分が映像上の"叙述トリック"になっていないか、もう一度観直してみる必要はある気がしますが、プロット自体は原作にほぼ忠実に作られているようです。ポワロの謎解きが終わった後、共犯者がポワロに毒づき、そのことによって、ああ、共犯者もいたのかと思い出したくらいですから、自分もヘイスティングスと似たようなものか。

 ポワロが引退を仄めかし、ヘイスティングスが中心になって捜査するとというのは、映像版のオリジナルのようで(但し、ヘイスティングスは例によって"空振り"をする)、短編の場合、サイドストーリーを加えて話を膨らますというのはよくあります。ポワロがこの海辺の町を行先に選んだところ、偶然そこでジャップ警部が講演会に呼ばれていたかのように思われましたが、実はそうではなかったことがエピローグで明かされ、更にポワロが最初イラついていた理由まで分かるというのが上手いです。

 「二重の罪」とは、盗難品では原則として所有権は移動しないため、理論上は同じ手口で再犯が可能であることを指していると思われますが、法的には、占有権とのしのぎ合いでグレーゾーンも存するように思えます(英国の裁判所はどう判断するのか)。


名探偵ポワロ(第17話)/安いマンションの事件 02.jpg ポアロは、あるパーティーで、若夫婦のロビンソン夫妻から自分たちが分不相応な高級マンションを格安で借りることが出来たという話を耳にし、この話の背後に何か事件が拘わっていると考え捜査に乗り出す。一方、スコットランドヤードでは、ジャップ警部が、アメリカからやって来たFBI捜査官たちと、国際的なスパイ事件に関する合同捜査を行っていた―(第17話「安いマンションの事件」)。

名探偵ポワロ(第17話)/安いマンションの事件 レモン.png  「名探偵ポワロ」の第17話(第2シーズン第7話)で本国放映は1990年2月18日、本邦初放映は1991年2月5日(NHK)。原作はクリスティー文庫『ポアロ登場』(「安アパート事件」)、創元推理文庫『ポワロの事件簿1』(「(「安アパート事件」)、新潮文庫『クリスティ短編集2』(「「安アパートの冒険」)などに所収。

名探偵ポワロ(第17話)/安いマンションの事件 eiga.jpg 冒頭でポワロ達が観ている映画はジェームス・キャグニー主演の「Gメン」('35年)という作品だそうで、当エピソードも、雰囲気的にはアメリカの犯罪サスペンス映画の雰囲気を取り入れたものと言えるでしょうか。プロット的には面白かったです(アーサー・コナン・ドイルの『シャーロック・ホームズの冒険』所収の「赤毛組合」に着想がやや似た印象も)。

名探偵ポワロ(第17話)/安いマンションの事件 set.jpg ただ、アメリカで起きた事件の屋外シーンが、見るからにバックが"書割り"風で(高層ビル街などは垂れ布に描いた風)、パリのナイトクラブのシーンが雰囲気があっただけに、ギャップが大きかったように思います(好意的に解釈すれば、パリのナイトクラブは今ポワロ達が見ている光景であるのに対し、アメリカでの事件は、ポワロが謎解きに際して想像したものを映像化したものであるから、わざと作り物風にしているのだと?)。

名探偵ポワロ(第17話)/安いマンションの事件3.png FBIの態度のデカい捜査官が、最初はポワロのことを小馬鹿にしていたのが、最後は素直にその能力を認め、感謝と脱帽の意を表しているのが快く、ポワロもさることながら、ジャップ警部も溜飲を下げたのでは。

 2篇とも、プロット的には面白かったです。それと、ミス・レモンが、第16話「二重の罪」では夢の中でポワロの示唆を得て失くした鍵を見つけ出し、第17話「安いマンションの事件」では、ポワロの指示で単独潜入捜査をして成果を得るなど(ポワロも危ないことさせるなあ)、かなり彼女に焦点が当たっているように思いました。

Double Sin  .jpg「名探偵ポワロ(第16話)/二重の罪」●原題:AGATHA CHRISTIE'S POIROT Ⅱ:DOUBLE SIN●制作国:イギリス●本国放映:1990/02/11●監督:リチャード・スペンス●脚本:クライブ・エクストン●時間:55分●出演:デビッド・スーシェ(ポワロ)/ヒュー・フレイザー(ヘイスティングス) /フィリップ・ジャクソン(ジャップ警部) /ポーリン・モラン(ミス・レモン)/キャロライン・ミルモー(メアリ・ダラント)/エルスペット・グレイ(エリザベス・ペン)/アダム・コッツ(ケイン)●日本放映:1991/01/22●放映局:NHK(評価:★★★☆)

Agatha Christie's Poirot (1989-2013) Double Sin


名探偵ポワロ(第17話)/安いマンションの事件9.png「名探偵ポワロ(第17話)/安いマンションの事件(安アパート事件)」●原題:AGATHA CHRISTIE'S POIROT Ⅱ:THE ADVENTURE OF THE CHEAP FLAT●制作国:イギリス●本国放映:1990/02/18●監督:リチャード・スペンス●脚本:クライブ・エクストン/ラッセル・The Adventure of the Cheap Flat.jpgマレイ●時間:55分●出演:デビッド・スーシェ(ポワロ)/ヒュー・フレイザー(ヘイスティングス) /フィリップ・ジャクソン(ジャップ警部) /ポーリン・モラン(ミス・レモン)/ジョン・ミッチー(ジェームス・ロビンソン)/サマンサ・ボンド(ロビンソン夫人)●日本放映:1991/02/05●放映局:NHK(評価:★★★☆)

The Adventure of the Cheap Flat

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