【1897】 ○ 労務行政研究所 『改正法対応版 高年齢者処遇の設計と実務 (労政時報選書)』 (2013/03 労務行政) ★★★★

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1冊で法改正のポイントも、制度設計も、企業の対応動向も分かるという点では便利。

1改正法対応版 高年齢者処遇の設計と実務.png改正法対応版 高年齢者処遇の設計と実務.jpg改正法対応版 高年齢者処遇 の設計と実務 (労政時報選書)』 (2013/03 労務行政)

 労使協定で定める基準により継続雇用制度の対象となる高年齢者の選別を認める仕組みを廃止した改正高年齢者雇用安定法(平成24年8月成立)の平成25年4月施行に合わせて刊行された解説書です。

 法改正のポイントを纏めた「法律・判例解説・規定例」と、60歳超雇用者の処遇に関する「実務解説」と、企業の対応をアンケート調査した「緊急調査」の、概ね"均等比重"の3部構成で、これ1冊で、法律も制度設計も企業の対応動向も分かるという点では便利です。

 特に、安西法律事務所の渡邉岳・小栗道乃の両弁護士が書いている法律解説の部分はコンパクトに纏まっていて、「改正法における継続雇用に関わるQ&A」が10問ありますが、これは必読箇所という印象で、定年後の雇用と処遇に関する判例解説も、これまた同じく、よく纏まっています。

 一方、三菱UFJリサーチ&コンサルティングのコンサルタント2人が執筆している「実務解説」も、60歳超の報酬パターンを図に示したり、年金支給開始年齢の繰り延べを踏まえた公的給付の活用と自社賃金の在り方を示したりと、丁寧ではありますが、ややごちゃごちゃした印象でしょうか。公的給付を活用しないパターンなども例示しているのは良いと思いましたが、紙数が足りなくなった印象も...。

 残り3分の1を「緊急調査」と、改正法に関する法律、施行規則、更に行政が出した指針及びQ&Aで費やしていますが、これ1冊で全て事足りるようにしようという意図は感じられるものの、結果的に、やや"専門誌の特集"的な本の作りになったよう気もします(「労政時報」の特集記事における調査とダブっているのでは。まあ、専門誌を購読せず、本書のみ買う人もいるだろうけれど、制度解説にもう少し比重を置いて欲しかった気もする)。全体に総花的と言うか...。その割には(だからこそか)3,900円(税込)はやや高いかな。

 改正法の成立時から年末にかけては、各企業どうやって対応するのだろうという印象でしたが、本書の調査結果にもあるように、改正法施行時期までには大手・中堅企業の大部分は方向性を打ち出したという印象で、今後は、60歳超の社員との接続において、60歳前の中高年社員の処遇の在り方が課題になってくるのではないでしょうか。

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