「●労働法・就業規則」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【1900】 藤原 伸吾 『基礎から学ぶ賃金・賞与・退職金の法律実務』
自主ゼミ形式になっていて、シズル感をもって読める。通学・通勤用?
『レッスン労働法』(2013/04 有斐閣)
大学の労働法の教授の研究室を舞台に、自主ゼミ形式で4人の若者が労働法を学んでいくというスタイルをとっていて、まず重要なテーマごとにメンバーの一人が報告(レポート)をし、そのあと全員でディスカッションを行い(レッスン)、最後に報告者作成の「まとめ」を掲げるという構成をとっています。
法科大学院のテキストに見られるようなケーススタディをベースに論点を提示する形式において、そこで交わされた議論を含めて再構成した感じと言えなくもないですが、本書では、一つ一つのケースから議論を進めるのではなく、前期15回は「労働法の基本と個別労働的労働関係法」について、後期15回は「労使関係法と労働法の現代的課題」について、例えば前期の第1回であれば「労働法の定義と憲法上の規定」といったように、労働法における包括的なテーマから、採用や賃金、労働時間・休日・休暇などの個々のテーマにブレイクダウンしていっています。
学部授業の延長としてあるゼミ講習という感じでしょうか。あくまでも「労働法のテキスト」を、ゼミレポートとそれを巡る討議という形式に置き換えたものと言えます。但し、こうしたゼミ討議形式をとっているとともに、レポートや討議の中でテーマに関連する主要な判例などにも触れられており、判例についても学びながら、学生の様々な視点を交えつつシズル感をもって読み進むことができるのが、本書の長所ではないでしょうか。
ゼミ生のコメントの頭に発言者の顔がイラストで描かれているのも、親しみやすさを覚えます。また、学生自身のアルバイトの経験なども話として織り込まれていて、大学で講義をする機会がある人には、講義において学生の関心を引き付けるうえでの参考になるかと思います。
新書版よりちょっと幅があって大きめであるぐらいのハンディな体裁で、それでいて内容が盛り沢山なために、余白が小さくてやや活字が詰まっている印象を受けますが、学生や社会人が通学や通勤の途中で読む分には手頃かと思われます。
それでいて解説は結構奥が深いと言えるのではないかと思われ、表紙の柔らかい印象に比べ、内容はかっちりしていると言えます(版元名からそのことは察せられるが)。