【1705】 ○ 広瀬 隆 『FUKUSHIMA 福島原発メルトダウン (2011/05 朝日新書) ★★★★

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案全対策強化も過渡期的措置であって、どうやって廃炉に持ち込むかが今後の課題になるのでは。

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FUKUSHIMA 福島原発メルトダウン (朝日新書)』   福島第一原発3号機水素爆発(2011年3月14日)

  『東京に原発を!』('86年/集英社文庫)、『原子炉時限爆弾』('10年/ダイヤモンド社)など、日本における大地震による原発事故発生の危険性について警鐘を鳴らしてきた著者が、「福島原発事故」発生後、朝日新聞社の要請を受けて著した新書です。

 基本情報の部分では前著と重なる部分も多いですが、原子力発電に関する入門書としても読め、また、目の目で繰り広げられる原発事故の様に沿って書かれている分、切迫感もあります。

 水素爆発など専門家ならば当然予見できたはずの危険は予め報道されず、実際3月12日午後3時36分に1号機、2日後の14日11時1分に3号機、15日6時14分には4号機の使用済み核燃料プールでと次々と水素爆発が起きたわけですが、そうしたものは全て起きてから過去形で、原因はこうだったのではないかとか報道されているところなどは、やはり、政府のマスコミを巻き込んだ情報操作を感じるなあ(3号機の水素爆発は核爆発だった可能性が高いそうだが)。

 福島第一は、GEが東京電力に警告したにも拘らず、コスト削減のため、余裕のない脆弱な冷却システムを設計せざるを得なかった欠陥品―というのには、ちょっと驚きです。
 
 どうやら事故解説でテレビに出演していた専門家とやらも、"御用学者"ばかりだったみたいだし、気象庁発表のマグニチュードが8.4→8.8→9.0という風に変わっていったのも、政府や原発推進派の政治家、東京電力など「想定外」という物言いを擁護するための、政治的介入だった可能性があるとの指摘には、確かにそうかもと思わざるを得ません(従来は「気象庁マグニチュード」を使っていたが、今回は「モーメントマグニチュード」というのに変えたそうだ。そんなのあり?)。

 放射能の数値についてもトリックが使われていて、安全性がやたら強調されるのは、「放射線の有効利用」を飯のタネにしてきた専門家らが、その危険性を訴えるはずが無いからであり、また、そもそも、内部被曝量というのは、生体解剖でもしない限り実態は不明であり、測定による数値化は不可能または無意味なものだそうです(その辺りも、分かり易く解説されている)。

 4つのプレートの境目にある日本の国土は、東海大地震、南海大地震が周期的に発生していて、静岡県の浜岡原発というのは地質学上も危ない場所にあるわけですが、首都圏と中部・関西の中間にあることから、原発震災が起これば、それら巨大都市圏に一斉に死の灰が降り注ぐ可能性があるとのこと(原発から放出された放射能の雲は、風速毎秒2メートルでも3日間で500キロメートル拡がるそうだ。日本の中枢部は全滅?)。

 地盤が脆弱な日本における原子力発電所の危険性について、『東京に原発を!』でも『原子炉時限爆弾』でも浜岡原発をメインに取り上げていますが、本書では最後に、北海道から鹿児島まで14の原発を取り上げおり、これ読むと、浜岡原発のみならず、どこもかしこも皆危ないようです。

 もう、これから原発を新たに作るなどということは論外であり、案全対策の強化も過渡期的措置であって、これらをどうやって廃炉に持ち込むかが今後の課題になるのではないかと思いました。

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This page contains a single entry by wada published on 2012年3月 3日 23:16.

【1704】 ○ 小出 裕章 『隠される原子力・核の真実―原子力の専門家が原発に反対するわけ』 (2011/01 創史社) ★★★★ was the previous entry in this blog.

【1706】 ◎ 小出 裕章 『原発のウソ』 (2011/06 扶桑社新書) ★★★★☆ is the next entry in this blog.

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