【1461】 × 湊 かなえ 『往復書簡 (2010/09 幻冬舎) ★★

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状況設定自体にかなり無理がある。『告白』のインパクトを超えるのは難しい?

往復書簡 湊.png    北のカナリアたち.jpg 
往復書簡』(2010/09 幻冬舎)「二十年後の宿題」2012年映画化「北のカナリアたち」(主演:吉永小百合)

 高校卒業以来10年ぶりに放送部の同級生が集まった地元での結婚式で、女子4人のうち千秋は行方不明であり、そこには5年前の「事故」が影を落としていたが、それが本当に事故だったのか、真実を知りたい悦子は、式の後日、事故現場にいたというあずみと静香に手紙を送る―。(「十年後の卒業文集」)

 「十年後の卒業文集」「二十年後の宿題」「十五年後の補習」の3作の連作ミステリで(それぞれの内容の繋がりは無い)、いずれも高校時代からその後にかけて起きた事故や事件について、その真相を探るためにかつての同級生同士や生徒と担任の教師が連絡を取り合う書簡形式になっており、そうした意味では、計算された構成となっているように思えました。

 ただ、ラストでそれぞれにひねりは効かせているものの、状況設定自体にかなり無理があるような気もしました。例えば、「十年後の卒業文集」ですが、手紙を受け取った側もハナから違和感を覚えているし、そもそも複数の視線が集まる同窓会で、そんなに上手く全員を欺き通せるものかと。「二十年後の宿題」なども、わざわざここまでして過去をほじくり返すかなという気もして、それにしてもこの連作の登場人物達は、皆"告白"好きだなあと。

 『告白』('08年/双葉社)を読んだ時もそうでしたが、登場人物があまり好きになれない―但し、『告白』の場合は、「読後感が良くない」こと自体が1つの"ウリ"であるような、登場人物に対する読者の感情移入も誘発しつつ、作者自身は登場人物達と一定距離を置いているような計算があったように思いますが、この連作は、(とりわけ「十五年後の補習」がそうだが)感動ストーリーにしようとしているのか、どうしようとしているのか、個人的にはよく分かりませんでした。

往復所管2.jpg北のカナリアたち poster.jpg 書簡体でありながらも、書簡体の中で過去の出来事を会話体で再現している箇所がいくつもあり、普通に手紙を書く人が、こんな小説家のような書き方をするかなあという違和感もありました。ミステリとしても読んでいて何となく先が読めてしまうという難点もあって、すべてにおいて物足りない印象。やはり、『告白』のインパクトを超えるのは難しいのか(いつかは超えて欲しいと思うが)。

【2012年文庫化[幻冬舎文庫]】 

「二十年後の宿題」 2012年映画化「北のカナリアたち」出演:吉永小百合/森山未來/満島ひかり/勝地涼/宮﨑あおい/小池栄子/松田龍平/柴田恭兵/仲村トオル/里見浩太朗  
   

十五年後の補習00.jpg十五年後の補習01.jpg「十五年後の補習」2016年TVドラマ化(主演:松下奈緒)

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