【1173】 △ 矢幡 洋 『困った上司、はた迷惑な部下―組織にはびこるパーソナリティ障害』 (2007/01 PHP新書) ★★★

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問題上司、問題部下をパーソナリティ障害という観点から分類。読み物としては面白いが...。

困った上司、はた迷惑な部下2.jpg困った上司、はた迷惑な部下.jpg困った上司、はた迷惑な部下 組織にはびこるパーソナリティ障害 (PHP新書)』['07年]

『困った上司、はた迷惑な部下』.jpg 職場にはびこる問題上司、問題部下を、パーソナリティ障害という観点から分類し、それぞれが上司である場合の対処法、部下である場合の扱い方を、それぞれ指南していて、分類は、各章ごとに次のようになっています。
 第1章 もっか増殖中の困った人びと(自己愛性、演技性、依存性)
 第2章 はた迷惑な攻撃系の人びと(反社会性、サディスト、拒絶性)
 第3章 パッとしない弱気な人びと(抑鬱性、自虐性、強迫性)
 第4章 意外な力を発揮する人びと(シゾイド性、回避性、中心性)
 第5章 やっぱり困った人びと(境界性、妄想性、失調型)

 現在の人格障害の国際基準は、DSMⅣの10分類ですが、本書では、DSMを監修したセオドア・ミロンが当初提唱した4カテゴリー(サディスト、自虐性、拒絶性、抑鬱性)を加え、更に「中心性」気質を加えており、これは大体この著者が用いる分類方法です。

 各性格の特徴は簡潔に述べるにとどめ、「俺に任せとけ」と調子のいいことを言い、その場限りに終わる演技性上司に対する対処法や、上司の言うことなら何でも聞いてしまう依存性部下の扱い方など、読み物として、まあまあ面白し、読む側にカタルシス効果もあるかも知れません(著者自身、自らの過去の職場での鬱憤を晴らすような感じで書いてる)。
 ただ、例えば、大物ぶって敬遠される自己愛性上司には、遠巻きにして勝手に歌わせておくか、おべっか言ってとりまきになるか、おだてて神輿に乗ってもらうかなどすればいいといった感じで、対応が何通りも示されている分、結局、どれを選べばいいのか?と思わせる箇所も。

 著者は最初、良心をかなぐり捨て、「読んだ人だけ得をしてください」というスタンスで本書を書いていたところ(サディスト的部下は、派閥争いの戦闘要員として使え、などは、確かにマキャベリズム的ではある)、初稿を見た編集者から「どういうタイプの性格にも長所がある、というメッセージが伝わってくる」と言われたとのこと。

 個人的にはむしろ、書かれているようにうまく事が運ぶかなあという気もしました。実際、うまく事が運ぶならば、「人格障害」と呼ぶほどのものでも無かったのでは...とか思ったりして。
 著者もあとがきでも述べているように、「人格障害未満」の人も含まれていて、先にビジネスパーソンの行動パターンありきで、そこに「人格障害」の類型を"類推"適用したような感じもあります("拡大"適用とも言える)。

 その結果でもあるのでしょうが、やはり15分類というのは多過ぎるような気もし、自分が人格障害に関する本を読んでいた流れで本書を手にしたこともあり、「人格障害」とはどういうものかをもう少しキッチリ知りたければ、同じPHP新書の『パーソナリティ障害-いかに接し、どう克服するか』(岡田尊司著/'04年)などの方が、内容的にはしっかりしているように思います。

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