【1152】 ○ 小林 由香 『〔改正高年齢者雇用安定法〕 65歳雇用延長の実務ポイント (2006/02 中経出版) ★★★★

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コンパクトでわかり易い。高年齢者処遇についての充分に的を射た内容。

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〔改正高年齢者雇用安定法〕 65歳雇用延長の実務ポイント

 '06(平成18)年4月に改正高年齢者雇用安定法が施行され、その前後に65歳までの雇用延長を巡る法律・実務関係の本が何冊か刊行されましたが、本書は、人事制度(処遇制度)を中心に据えて書かれた本の中では最もわかり易く簡潔に纏められた類のものと言えるかと思います。
 法改正の概要や就業規則の整備、雇用契約書の作成方法などにも触れられていますが、中心となるのは、「高年齢者のやる気を引き出す人事・賃金制度のつくり方」についてです。

 この法改正に対し、殆どの企業は、定年の廃止や引き上げではなく、「再雇用制度」や「勤務延長制度」などの継続雇用制度で対応し、とりわけ、従来の定年嘱託制度に近い「再雇用制度」という形をとる企業が多かったのですが、「再雇用制度」において、希望者全員を再雇用するとはしない場合、労使協定によって再雇用の対象者をどのように絞るかが、議論の焦点になることが多かったように思います。

 本書でも、その辺りの諸制度の概念整理や手順解説をしつつ、「再雇用制度」が最も現実的であるとしていますが、単に、「法律への対応」としてではなく、「高年齢者を活用する」という視点から、再雇用後の人事処遇全般について検討し、賃金・インセンティブなどの効果的なノウハウを解説しています(この点こそ、企業の裁量権が最も発揮できる部分であるとも言える)。

 再雇用の賃金制度については、もっと分厚い解説書では、いきなり「一定率減額給」の様々なパターンが詳細に示されているものが多いように思えますが、本書ではそれ以前に、「一律固定給」という考え方が示されており、採用するかどうかは別として、先ずここから検討を始めるのがスジではないかと思い(高齢者の場合、前年度に比べて業績がどうであったかということ以前に、職務価値評価という観点を入れた方がいいと思う)、更に「時給・日給制」も検討の視野に入れている点などにも共感しました。

 昇給・賞与制度についても書かれていますが、インセンティブや退職金制度(所謂、第2退職金)は、一般社員とはまた異なる観点でのものとなり、独立支援的な制度の導入も提案されています。

 コンパクトで価格も手頃(127p、1,100円)、制度設計の初心者でも読めて、内容的には高年齢者処遇について充分に的を射たものになっていると思いました。

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