「●算数」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【802】 栗田 哲也 『数学に感動する頭をつくる』
面白かったが、目的からすると食い足りない(または難しすぎる?)。
『子どもが算数・数学好きになる秘訣』〔'02年〕 『数学的思考法―説明力を鍛えるヒント 講談社現代新書』〔'06年〕
'02年の刊行ですが、著者は'94年以降、算数や数学の面白さを新聞・雑誌・講演会などで訴えてきた数学者であるとのこと。
46項目から成る本書は、1項目約3ページの本文において子どもが算数や数学を好きになるような学習のヒントをまとめ、それぞれの項目に、算数や数学に関する話題を扱ったコラムが付されています。
こうした構成なので読みやすく、またコラムも含め面白くて、むしろ、読んだ親自身の方が、算数や数学の奥深さに触れ、その面白さを再認識するかも。
ただし、それを直接子どもに伝え、学習面で動機付けしようとするのは、(子どもの年齢や学力・意欲の水準にもよるが)なかなか大変ではないかという気もしました。
本文における著者の基本的考え方は、解法をパターン化して覚えさせることを避け、じっくり自ら考えさせることで戦略的思考力を養わせるもので、所謂パターン学習とは対極を成すものですが、定理や公式に頼りすぎるのもよくないけれども、ある程度それらを覚えないと、"掛算九九"と同じで、先に進めず、かえって挫折してしまうこともあるのでは。
"親・教師"をターゲットとして書かれた本ですが、"一般読者"を対象とした同著者の『数学的思考法―説明力を鍛えるヒント』('06年/講談社現代新書)と多分に記述は重なり(コラムのネタなどは特に)、「数学的思考法」について書いた本としてみた場合は、近著の新書よりむしろこちらの方が読みやすかったです。
ただし、帯にあるような、子ども「成績アップ」を期待して本書を手にした親には、「面白かったけれども、目的からすると食い足りない」、または「難しすぎる」という印象を受ける人もいるのでないかと、気を回してしまいます。
例えば、子どもが「現実社会型」であるか「純粋数学型」であるかを見極め、それに応じて問題の与え方を変えると効果的であるというのは、理屈はよくわかるけれども、教師からすれば学校でこの使い分けをするのは難しいし、親からすれば、少なくとも自分にある程度の数学的素養がないと...(本書にあるような「オイラーの小定理」を理解している親がどれぐらいいる?)。