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生きようとする子供たちの表情を捉える。原爆症の子供の写真が痛々しかった。
豊田 直巳 氏(1956年生まれ)
『写真集・イラク戦争下の子供たち』〔'04年〕『フォト・ルポルタージュ「イラク戦争」の30日―私の見たバグダッド』〔'03年〕
ルポルタージュもこなす戦場カメラマンの写真集で、先に『フォト・ルポルタージュ「イラク戦争」の30日-私の見たバグダッド』('03年/七つ森書館)を読みましたが、多くの取材陣がそうであったようにビザ取得に苦労したようで、米英軍によるイラクへの空爆が開始された日にイラクへ入りしているものの、バグダッド中心部には達しておらず、バグダッドに入ってからも、これまた多くの取材陣がそうであったように、情報省の報道規制で振り回されている感じ。
アスネ・セイエルスタッドの『バグダッド101日』('07年/イースト・プレス)を読むと、「30日」と「101日」の差を感じるというか...、彼女の方は空爆の始まる3カ月前から市内の様々な人を取材し、情報省を頼みにせず、"取材ツアー"なるものにも価値を置かず独自取材をし(その結果、情報省から睨まれている)、現地に残った唯一の北欧人ジャーナリストとして頑張っている―、それに比べると、「バー・宮嶋」("不肖・宮嶋"こと宮嶋茂樹氏主催?)に日本人同士集っているのは、ちょっとヌルい感じも(戦時下のバグダッドにいるということだけでも大変なことなのだろうけれど)。
むしろ、写真集である本書『イラク戦争下の子供たち』の方がストレートに訴えるものがあり、これまでも、イラク、アフガン、パレスチナで子供たちを撮り続けているだけのことはありますが、戦時下または内戦の混乱の中でも、何とか一縷の希望のもとに明るく生きようとする子供たちの表情を、見事にファインダーに捉えています。
そうした写真の中で、原爆症の子供の写真はとりわけ痛々しく思われ、『「イラク戦争」の30日』にも原爆症の若い女性のモノクローム写真が掲載されていて、その女性は間もなく亡くなったとのことでしたが、現地の原爆症の多くは湾岸戦争で使われた劣化ウラン弾(アメリカは使用を否定している)の"後遺症"だと思われ、今回の戦闘でもさらなる劣化ウラン弾がイラク全土に打ち込まれていると見られています(本書には、イラクの原子力施設の近くで被曝したと思われる少年の写真が掲載されている)。
本書は、八木久美子・東京外語大学教授(著書『イスラム教徒へのまなざし』)、ジャーナリストの渡辺悟氏(著書『クルド、イラク、窮屈な日々』)ら識者が、近年刊行されたアジア関係の本のベスト5に挙げています。