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設定に引き込まれた。「トーマの心臓」より重層的で厚みがある。
『ポーの一族 1 (1) (フラワーコミックススペシャル 萩尾望都パーフェクトセレクション 6)』 〔'07年〕/『ポーの一族』(全4巻) 〔'74年〕/小学館叢書 (全3巻)〔'88年〕
1972(昭和47)年から1976(昭和51)年にかけて発表された萩尾望都の代表的長編作品で、1975(昭和50)年・第21回「小学館漫画賞」(少年少女部門)受賞作(「11人いる!」と併せて受賞)。
バンパネラの一族として生きるエドガーと、彼により一族に引き込まれたアランの物語ですが、14歳の少年のままの美貌を保つ彼らが、18世紀から20世紀のヨーロッパ各地に出没するという設定にまず引き込まれました。
時代が前後しながら展開される15編のストーリーで、最初はテレビドラマ「タイムトンネル」(古い!)みたいに恣意的に時間移動しているのかと思いましたが、実はそれらがすべて関連付けられていて、謎が徐々に読者に明かされていくという―この構築力は、作者20代前半の作品とは思えないほどのものでした。
この作品の〈年代表〉を作る熱心なファンもいるようですが、自分はそこまではしないものの、気持ちはわかる...。
永遠の生を持ちながらも、それは人間の血で贖われていて、それをバラのエキスで"代替可能"としている点はロマンチックですが、結局のところ彼らは正体が人に知られれば迫害される存在であり、一方、彼らが愛する美しい女性たちはやがて老いて死を迎える、いわば時間に蝕まれていく存在である―。
しかし生身の人間であっても、生きている限りにおいて、思い出としての青春は「今」自分の中に在る、または在ると信じたいもので、エドガーらは、そうした人間の思いを投射した存在に思えました。
"少年愛"ものの出始めの時期だったこともあり、15編の中では、ギムナジウムを舞台とした「小鳥の巣」などが好評でしたが、このテーマは『トーマの心臓』でより端的に描かれています。
個人的にはむしろ、エドガーの妹に対する犠牲的精神が描かれた「メリーベルと銀のバラ」などが良く、全体に『トーマの心臓』よりもテーマが重層的で厚みのある物語だと思います。
'77年に出た小学館のプチコミックス版「萩尾望都作品集」、'88年に出たこの「叢書版」、'98年に出た「文庫版」、'00年に出た「フラワーコミクッス版」など、みんな話の並べ方が微妙に違うようです。それでも読めるストーリーですが...。
【1974年コミックス版(全5巻)・1977年コミックス版「萩尾望都作品集」(全4巻)・1988年叢書版(全3巻)[小学館]/1998年文庫化[小学館文庫(全3巻)]/2007年単行本[小学館フラワーコミックススペシャル(全2巻)]】