【458】 ○ 筒井 康隆 『カメロイド文部省―自選短篇集〈5〉ブラック・ユーモア未来篇』 (2003/01 徳間文庫) /『わが愛の税務署―自選短篇集〈6〉ブラック・ユーモア現代篇』 (2003/03 徳間文庫) ★★★★ (○ 永井 豪 (原作:筒井康隆) 『混乱列島』 (1977/03 朝日ソノラマ) ★★★☆)

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'60年代作品の短篇集。突き抜けた面白さ、実験的要素もふんだんに。

筒井康隆 自選短篇集〈全6巻セット.jpgカメロイド文部省.jpg  わが愛の税務署.jpg   混乱列島.jpg
『筒井康隆 自選短篇集〈全6巻)』『カメロイド文部省―自選短篇集〈5〉ブラック・ユーモア未来篇 (徳間文庫)』『わが愛の税務署―自選短篇集〈6〉ブラック・ユーモア現代篇 (徳間文庫)』永井豪(原作:筒井康隆)『混乱列島 (1977年) (サンコミックス)

 筒井康隆の自選短編集が'02年から「新潮文庫」と「徳間文庫」でドドッと出ました。「徳間文庫」の方を読みましたが、ドタバタ篇、ショート・ショート篇、パロディ篇、ロマンチック篇、ブラック・ユーモア未来篇、ブラック・ユーモア現代篇の全6冊です。主に'60-'70年代の初期作品が収められていますが、個人的にはこの「ブラック・ユーモア未来篇」が一番楽しめました(その次が「ブラック・ユーモア現代篇」か。「ブラック・ユーモア篇」だけ分冊にしているだけのことはある)。

混乱列島 永井豪  .jpg混乱列島 永井豪_o1.jpg 読心能力者の受難を滑稽に描いた「底流」や、ローマ時代のような階層社会を描いた「下の世界」(これがある意味一番SFチック)、SF名作『冷たい方程式』のパロディ「たぬきの方程式」(永井豪の筒井康隆の作品を漫画化したアンソロジー『混乱列島』で漫画にもなっている。筒井康隆を"永井豪テイスト"で愉しみたい人にはお奨め)のほか、露出狂の女性を描いた「脱ぐ」(仮に今この内容で新作として発表されればフェニミズム団体から猛抗議を喰うのでは)―など、"ブラック・ユーモア"とか"未来"という枠組みを突き抜けた面白さで、実験的要素もふんだんにあります(そのことは『わが愛の税務署-自選短篇集〈6〉ブラック・ユーモア現代篇』にも当てはまる)。

永井 豪 (原作:筒井康隆)『混乱列島 (1977年) (サンコミックス)(初出:1976年「週刊小説」4月26日号-9月13日号)
1. パチンコ必勝原理/2. 池猫/3. 地下鉄の笑い/ 4. 腸はどこへいった/ 5. きつね/ 6. たぬきの方程式/7. 姉弟/8. 超能力/9. 蝶/10. おれに関する噂/11.「私説博物誌」より/12. 自動ピアノ/13. 流行/14. 遠泳/15. 佇むひと

 「新潮文庫」の方は、もう少し後期の作品を中心にとり上げているようですが(ドタバタ傑作集とホラー傑作集が各2冊ずつとグロテスク傑作集の計5冊)、昔の短編がこうして再度世に出る作家というのも、SF・ユーモア作家では少ないのではないでしょうか。作者の作品は、衒学的・思念的なものよりも、個人的には気軽に読めるスラップスティック調のものが結構好きなので、初期作品の再刊・再収録はありがたいことです。

《読書MEMO》
『カメロイド文部省-自選短篇集〈5〉ブラック・ユーモア未来篇』・12作
◆脱ぐ('60年)/◆無限効果('61年)/◆二元論の家('61年)/◆底流('61年)/◆やぶれかぶれのオロ氏('62年)/◆下の世界('63年)/◆うるさがた('65年)/◆たぬきの方程式('70年)/◆マグロマル('66年)/◆カメロイド文部省('66年)/◆最高級有機質肥料('66年)/◆一万二千粒の錠剤('67年) 

『わが愛の税務署-自選短篇集〈6〉ブラック・ユーモア現代篇』・8作
◆融合家族...二組の夫婦の奇妙な同棲生活/◆コレラ/◆旗色不鮮明/◆公共伏魔殿/◆わが愛の税務署/◆地獄図日本海因果(だんまつまさいけのくろしお)...北朝鮮軍の発射したミサイルにより時空が大混乱する/◆普金太郎/◆廃塾令

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