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「原因究明」型のトラウマ理論より「解決志向」を説く。
『立ち直るための心理療法』ちくま新書 〔'02年〕 矢幡洋 氏 (臨床心理士)
本書ではまず、「心の病気」を、
1.精神病(うつ病・精神分裂病)
2.心身症
3.神経症
4.依存症
5.適応上の問題
の5つに区部し、それぞれについてわかりやすく解説しています(この区分はほぼ国際的な基準に沿ったものである)。例えば神経症の解説についても、「森田神経症」や「退却神経症」などもフォローするなど、行き届いた感じがしました。
さらに、それらに該当する場合、「精神科医」に診てもらうべきか、「カウンセラー」に診てもらうべきかを述べていますので、専門家の支援が必要な人にとっては良い"助け"になるかと思います。またそれは、カウンセラーにとっても、同じことが言えるかもしれません。
最近は「心の病気」を「アダルト・チルドレン」や「PTSD」といった概念で説明することが流行っていますが、著者はこうしたトラウマ理論はぶっとばせ!と言っています。こうした"原因究明"は治療とは直結せず、新たな問題を増やす恐れさえあるという著者の言説には、説得力を感じます。どうやって「立ち直る」かが問題なのだと―。
この考え方は、後半部分の心理療法の実際についての説明にも表れていて、「解決志向セラピー」や「ナラティブ・セラピー」というものに代表される「ポストモダンセラピー」に、特に頁を割いて説明しています。この他にも、諸外国で行われているセラピーを紹介していますが、大方が自らの体験に基づいた記述なので、どのようなものかをイメージしやすいと思います。
著者は精神科医ではなく臨床心理士ですが、精神病院や精神科クリニックなどでの勤務経験が豊富で、自らをカウンセラーとしては精神科医寄りかも知れないと言っています。本書には良い意味で、その特色が出ていると言えます。
《読書MEMO》
●心理療法の種類
・言語によるアプローチ(精神分析、クラエアント中心療法、ポストモダンセラピー)
・変性意識状態による治療法(自律訓練法、トランスパーソナル心理学、イメージ療法)
・ボディワーク(センサリー・アウェアネス、フェルデンクライシス身体訓練法、オーセンティック・ヌーブメント他)
・芸術療法(アートセラピー、音楽療法他)