【191】 ○ 矢幡 洋 『立ち直るための心理療法 (2002/06 ちくま新書) ★★★★

「●カウンセリング全般」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【192】 平木 典子 『カウンセリングの話
「●ちくま新書」の インデックッスへ

「原因究明」型のトラウマ理論より「解決志向」を説く。

立ち直るための心理療法.jpg  『立ち直るための心理療法』ちくま新書 〔'02年〕 矢幡 洋1.jpg 矢幡洋 氏 (臨床心理士)

ca_img01.jpg 本書ではまず、「心の病気」を、
 1.精神病(うつ病・精神分裂病)
 2.心身症
 3.神経症
 4.依存症
 5.適応上の問題
 の5つに区部し、それぞれについてわかりやすく解説しています(この区分はほぼ国際的な基準に沿ったものである)。例えば神経症の解説についても、「森田神経症」や「退却神経症」などもフォローするなど、行き届いた感じがしました。
 さらに、それらに該当する場合、「精神科医」に診てもらうべきか、「カウンセラー」に診てもらうべきかを述べていますので、専門家の支援が必要な人にとっては良い"助け"になるかと思います。またそれは、カウンセラーにとっても、同じことが言えるかもしれません。

 最近は「心の病気」を「アダルト・チルドレン」や「PTSD」といった概念で説明することが流行っていますが、著者はこうしたトラウマ理論はぶっとばせ!と言っています。こうした"原因究明"は治療とは直結せず、新たな問題を増やす恐れさえあるという著者の言説には、説得力を感じます。どうやって「立ち直る」かが問題なのだと―。

 この考え方は、後半部分の心理療法の実際についての説明にも表れていて、「解決志向セラピー」や「ナラティブ・セラピー」というものに代表される「ポストモダンセラピー」に、特に頁を割いて説明しています。この他にも、諸外国で行われているセラピーを紹介していますが、大方が自らの体験に基づいた記述なので、どのようなものかをイメージしやすいと思います。

 著者は精神科医ではなく臨床心理士ですが、精神病院や精神科クリニックなどでの勤務経験が豊富で、自らをカウンセラーとしては精神科医寄りかも知れないと言っています。本書には良い意味で、その特色が出ていると言えます。

《読書MEMO》
●心理療法の種類
 ・言語によるアプローチ(精神分析、クラエアント中心療法、ポストモダンセラピー)
 ・変性意識状態による治療法(自律訓練法、トランスパーソナル心理学、イメージ療法)
 ・ボディワーク(センサリー・アウェアネス、フェルデンクライシス身体訓練法、オーセンティック・ヌーブメント他)
 ・芸術療法(アートセラピー、音楽療法他)

About this Entry

This page contains a single entry by wada published on 2006年8月19日 12:10.

【190】 ○ 河合 隼雄/南 伸坊 『心理療法個人授業』 (2002/06 新潮社) ★★★★ was the previous entry in this blog.

【192】 ○ 平木 典子 『カウンセリングの話 [新版]』 (2004/01 朝日選書) ★★★★ is the next entry in this blog.

Find recent content on the main index or look in the archives to find all content.

Categories

Pages

Powered by Movable Type 6.1.1