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「●か 河合 隼雄」の インデックッスへ
語られているのは、"技法"よりもクライエントに向かうときの"姿勢"の話。
『心理療法個人授業』〔'02年〕 『心理療法個人授業 (新潮文庫)』〔'04年〕
南伸坊氏が"生徒"になって各界の専門家の授業を受けるというスタイルのシリーズ第4弾で、"先生"は河合隼雄氏。
同じこのシリーズの、養老孟司氏が先生役の『解剖学個人授業』('98年/新潮社)を読んでいたので、南伸坊という言わば"素人"さんを介在して、一般読者の入りやすい切り口から学問の特定分野の世界を紹介し、読者により身近に感じてもらおうというのがこのシリーズの狙いであって、必ずしも体系的に○○学とは何かを述べているものではないということはわかっていました。本書も大体はそうしたコンセプトに沿ったものですが、基本的にはわかりやすい言葉で書かれているものの、内容的には奥が深いと思います。
『解剖学個人授業 (新潮文庫)』
「授業」というタイトルにつられて知識や技法論を求め過ぎて本書を読むと、思惑違いということになるのではないかと思います。この本で述べられているのは主として"技法"以前の話、つまりクライエントに向かうときの姿勢についてであり、そちらの方が"技法"そのもよりずっと大事なのだと思いました。
個人的には、来談者中心療法の祖とされるカール・ロジャーズが、セラピストの人格とクライエントに向かう態度を強調する一方で、技法論そのものはあえて提唱しなかったこととの共通性を、河合隼雄氏に見出した思いがしました。心理療法というのは、心理療法家個人が人間として先ずどう在るのかに依存するところが大きいのではないかと。
【2004年文庫化[新潮文庫]】