【189】 ○ 河合 隼雄 『人の心はどこまでわかるか (2000/03 講談社+α新書) ★★★☆

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心理療法における問題を扱うと同時に、著者のエッセンスが随所に。

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人の心はどこまでわかるか』講談社+α新書 〔'00年〕

 河合隼雄氏が、心理療法家として活躍している中堅の方々との対談を通して、対談の後に個別に寄せられた質問に答える形をとりながら、その中で自分がどうして心理療法家になったか、心理療法を通して何が見えてきて何が難しいと感じたかなども含めまとめたものです。西洋人の父性原理を通してみる日本人の心の問題や、氏にとってのユングの存在についてなど、"河合隼雄"のエッセンスが詰まっています。

人の心はどこまでわかるか5.JPG 結局のところ人の心はわからないのであって、そのことを認識した上で努力を重ねる、その姿勢が大切なのだということでしょう。著者の言を借りれば、いかにわからないかを骨身にしみてわかった者が「心の専門家」であると―。特に、事例研究の重要性を説いていたのが印象に残りました。

エトルリヤの壷.jpg 西洋人の父性原理につて述べた部分では、その象徴的な話として紹介されている、村の掟を破った自分の息子を父親が銃殺するというプロスペル・メリメの「マテオ・ファルコーネ」という小説の話が印象的で、この父親の感覚は日本人には理解しがたいものでしょう。

 理解しがたいということは、カウンセラーとしての父性・母性のバランスを考える場合、それだけ日本人の場合、父性の役割をもっと意識した方がいいというのが、河合氏の考えのようです。この辺りは『母性社会日本の病理』('76年/中央公論新社、'97年/講談社+α文庫)で河合氏が展開した、日本は母性社会であるという比比較文化論的な流れを引いていると言えるかと思います。

 しかしながら、全体として心理療法において専門職であるところのセラピストが直面する諸問題を扱った本書が、発刊後すぐに10万部突破の売れ行きを示したのは、編集部がつけたというタイトルのうまさ、著者のネームヴァリュー、「講談社+α新書」の創刊ご祝儀的要素などいろいろあるにしても、やはり日常社会の人間関係などを難しく感じている人が多い時代だということなのでしょうか。

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