【120】 ○ 浜辺 陽一郎 『コンプライアンスの考え方―信頼される企業経営のために』 (2005/02 中公新書) ★★★★

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コンプライアンス=「法令遵守」という訳語は不完全であると指摘。

コンプライアンスの考え方.jpg 『コンプライアンスの考え方―信頼される企業経営のために』 中公新書 〔'05年〕

 コンプライアンス=「法令遵守」、つまり「法令違反を犯さないこと」がコンプライアンスだと理解されがちですが、欧米で「コンプライアンス」と言えば、「法令遵守」だけでなく「企業倫理」も対象とするのが一般的であるとのこと。
 では「経営倫理」「企業倫理」とは何なのか、また「コーポレート・ガバナンス」「CSR」「リスク・マネジメント」といったものとはどういう関係にあるのかを解説し、さらに「コンプライアンス」への取り組み方や、どこから始めてどこまでやるべきかなどが書かれています。

 ただし全体としては、実務書と言うよりは、用語の定義的な話がかなりの比重を占め、これら外来語の背景にある法文化などにも触れていますが、何となく一般化した外来語が溢れる中、コンプライアンスの定義的位置づけを隣接概念と併せてを理解することも必要かと思われ、そうした意味では充実した解説がされている本です。

 「コンプライアンスは大事なこと」と理解しつつも、形式主義に陥ったり、意識教育がなされていないことで起きる事故や悲劇を例に挙げながら、コンプライアンス・プログラム(長期的な視野に立って会社の健全な活動を促すための総合的なプログラム)への主体的な取り組みを訴えています。

 自社に「コンプライアンス委員会」があるとすれば、まずメンバーがどのあたりまで「企業倫理」や「主体的取り組み」というものを意識しているか、「法令遵守」に汲々とし受身的になっていないか、本来のコンプライアンスの在り方との距離を測るうえでも、参考になるかと思います。

《読書MEMO》
●コンプライアンス=「法令遵守」という訳語は不完全、ややもすると誤ったとニュアンスを伝えてしまう危険性も(4p)
●「遵守」は最終的に個人→コンプライアンスの中心にあるのは「組織的な対応手法」(5p)
●コンプライアンスは法令だけでなく企業倫理(ビジネス・エシックス)も対象とする(7p)
●監査役がコンプライアンスの中心的な役割を担うと考えると、コンプライアンス・プログラムがカバーする領域が限定され、無理が生じる(監査役に業務執行権はなく、基本的には「適法性監査」をしていれば十分)(79p)
●コーポレート・ガバナンスの2つの狙い...1.コンプライアンス 2.経営パフォーマンス・業績向上(コーポレート・ガバナンスの一環としてコンプライアンスがある)(88p)
●CSR(corporate social responsibility)「企業の社会的責任」
・コンプライアンスもCSRも同じような価値観と狙いを持っている
・CSRはどちらかと言えば、ポジティブな目標を高く掲げ、「法的責任」よりも「社会的責任」に焦点をあてている(99p)。
● CSRは欧州でブーム、米国ではコンプライアンスが先行
● 法律の規制内容は何も変わっていないのに、その取締りが強化されるようになったものも少なくない(例えば、コンプライアンスの中で軽視されがちであった労働法の分野―サービス残業に対する塹壕手当の不払い解消に向けた厚生労働省の取り組み強化)(212p)

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This page contains a single entry by wada published on 2006年8月16日 18:23.

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