【112】 △ 出井 伸之 『非連続の時代 (2002/12 新潮社) ★★★

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出井氏の下、バリューチェーン・カンパニーを目指したソニーだったが...。

非連続の時代.jpg 『非連続の時代』 (2002/12 新潮社) 非連続の時代2.jpg 新潮文庫 〔'04年〕

 ソニーの社長だった著者が社長就任の'95年から'02年までの間に内外に向けて行ったスピーチを集めたものですが、それぞれに単なる挨拶や世相分析にとどまらず、しっかりしたメッセージ性があり、また「収穫逓増の法則」といった経営理論から「複雑系」などのアカデミックな内容も含まれていて、それらを噛み砕いて話す技量には感心させられます。

 テレビとPCは融合すると言ったビル・ゲイツの予測が外れた理由の考察(「30度の法則」に納得!)や「Qualia(クオリア)」の話(茂木健一郎氏に感化されすぎ?)などもあります。

 盛田昭夫氏はスピーチのときに原稿を見なかったそうですが、出井氏がどうしてかと問うと「人を口説くとき原稿を見ますか」と言われたとのこと。出井氏も原稿を見ないで、これだけの話をしたのだろうか。

 インターネット普及によるネットワーク社会の到来で、人と企業は自ずと変らなければならず、そのためには過去の経験や現状に囚われない新しい発想に基づく「非連続の改革」というものが欠かせないと言っています。

 個人的に興味深かったのは、GEを「ポートフォリオ・カンパニー」、ディズニーを「バリューチェーン・カンパニー」とし、ソニーは後者を目指すとしているところで、エレクトロニクス、ゲーム、コンテンツ(映画・音楽)をその核に置いていること(製品としてのVAIOのコンセプトなども見えてきます)。

  '99年の段階で携帯電話がタダで売られているのを見て従来型ものづくりの限界を知り、その背景にある通信事業も国際競争にさらされるなか、コンテンツビジネスを志向したのはわからなくもありません(MGM買収に見られるように、同じものづくりでも、ソフトウェア志向になった)。

 「オールソニーのシナジー効果の最大化」を図った...しかし、その結果、イノベーションの弱体化(ウォークマンがiPodにとって代わられるなど)を招いたのは皮肉。
 経営悪化に伴い、買収の赤字を補填していたのは旧来のビジネスであり、社内の上層部の体質は極めて内向きで、商売のやり方は杜撰な殿様商売だった...等々、内実が暴露されているようですが、著者が「賢人会議」で講演している間に、社内ではいろいろな不満がくすぶっていたのでしょうか(現実は理想どおりにはなかいかないものだなあ)。

 【2004年文庫化[新潮文庫]】

《読書MEMO》
●ジョン・コッターの「変革のための8つのステップ」の出井流アレンジ(19p)
1.危機意識の確立と共有
2.経営ビジョンの創造と伝達
3.アクションを起こすための強力なマネジメント体制の確立
4.具体的な目標設定
●「ポートフォリオ・カンパニー」と「バリューチェーン・カンパニー」(76p)
・ 「ポートフォリオ・カンパニー」...各ビジネスユニットが独立でビジネス展開し、成果を上げられないユニットは切り捨てるか他社へ売却
・ 「バリューチェーン・カンパニー」...それぞれのビジネスユニットが互いに密接な関係を持ってシナジー効果を高め合う

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