【060】 △ ウィリアム・パウンドストーン (松浦俊輔:訳) 『ビル・ゲイツの面接試験―富士山をどう動かしますか?』 (2003/06 青土社) ★★★

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 ○経営思想家トップ50 ランクイン(ビル・ゲイツ)

「面接本」としてより、「パズル本」としての充実度の方が高い?

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ビル・ゲイツの面接試験―富士山をどう動かしますか?』(2003/06 青土社)  "How Would You Move Mount Fuji?: Microsoft's Cult of the Puzzle--How the World's Smartest Companies Select the Most Creative Thinkers"

Bill Gates.jpg 米国のコンピュータ会社の採用面接において「パズル問題」が用いられることは伝統的なもののようですが、マイクロソフトのそれは、ビル・ゲイツのパズル好き、パズルによって人の思考能力が測れるという信念に負うところ大であるという印象を、本書を読んで受けました。

 マイクロソフトにおける面接の歴史だけでなく、米国におけるIQテストの歴史やそれに対する評価の変遷(それがもたらした悲喜劇)などについても触れられており、IQテストに限界があり、「あなたの強みと弱みは何ですか?」というありふれた質問にもさほど意味が無いとすれば、そんな質問をする代わりに「論理パズル」をしたほうが良いというのはわからないでもないです。

 マイクロソフトの採用試験で出された「論理パズル」が多く紹介されており、その中には純粋な「論理パズル」もあれば、サブタイトルの問題や「世界中にピアノの調律師は何人いるか」などといった正解の無い問題もあり、後者の問題は、「くだらない」「わかりっこない」と思ったら受験者の負けで、根気強く解答に行き着く道筋を考えていく、いわば問題解決への意志力を見ているように思えます(少なくとも〈右脳的〉発想力を見ている問題ではない)。
 何れにせよ、著者も述べているように、本書で取り上げているのは質問のたたき台であり、そのまま模範例として使えるものは少ないでしょう。

面接.jpg 面接の第一印象は、はじめの数秒で決まり、その印象が変わることはほとんど無いということはよく言われますが、それを実験データーで示しているのには説得力があり、また、面接の指針として「ストレス面接はしない」「面接評価は申し送りしない」など共感できる部分もありましたが、全体には今ひとつまとまりがなく、本書が結構売れたのはタイトルのお陰ではないかと思います。

 「面接本」としてよりも「パズル本」としての充実度の方が高いのは(本文中にあるマイクロソフトの「論理パズル」の解答に後半100ページ費やしている)、著者がゲーム理論の解説書『囚人のジレンマ』('95年/青土社)の著者と同じ人物であることも関係しているでしょう。

 「南へ1キロ、東へ1キロ、北へ1キロ歩くと出発点に戻るような地点は、地球上に何ヵ所あるか」という問題の答えが「北極点」だけでないことに、本書で初めて気づきました。
 読み物として楽しめるものの、そうしたことを知る目的で本書を手にしたわけではなかったのですが...。

【2298】 ○ 水野 俊哉 『明日使える世界のビジネス書をあらすじで読む』 (2014/04 ティー・オーエンタテインメント)

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