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"ダメ部下"の「見本市」?
『ダメ部下を再生させる上司の技術』(2009/10 マガジンハウス)
"ダメ部下"は職場と上司がつくるものであって、「会社なんでこんな奴を雇ってしまったのだろう」というような"ダメ部下"がいたとしても、それは上司次第で"再生"できるという考えに基づき、そのノウハウを示した本で、「上司学」の本であると同時に「コーチング」の本でもあると言いたいところですが、コーチングの諸原理をきっちりベースにしているとも言い難いような内容。
冒頭の事例で出てくる"ダメ部下"の事例はヒド過ぎで、"お話"として読んでいる分には面白いけれども、採用面接で篩(ふる)い分けすべきレベルではないかと思いました。
IT関連のような人の出入りの激しい業界や、著者の出身であるリクルートのように新卒・中途を問わず大量採用して、あとは"代謝"(退社)を促すシステムが整っているという会社ならともかく、普通の会社で、年中こんな事例に遭遇しているとすれば、人事部または採用担当者に問題があるのでしょう。
その冒頭の事例と、本論で出てくる"ダメ部下"とでは、やや"ダメ"のレベルが違うような気がしたのですが、ケーススタディの後に、"ダメ部下"を「やる気×理解力」という軸で、
・A「やる気【高】×理解力【低】」=やることなすこととんちんかん KY(空気読めない)タイプ
・B「やる気【高】×理解力【高】」=「本当はできるはず」の薄幸な人 BL(Bad lac)タイプ
・C「やる気【低】×理解力【高】」=プライドが邪魔して素直になれない天邪鬼 AKY(あえて空気を読まない)タイプ
・D「やる気【低】×理解力【低】」=できないづくしのお荷物クン DM2(ダメダメ)タイプ
の4つに分類し、更に全体を24タイプに分けて、対処法を示しています。
「4分類」にはまだオリジナリティがありますが、「24タイプ」というのは「分類し過ぎ」という感じがし、元の「4分類」がそもそも現象面の分析であってそれほど深くないのに、それをまた24に分けているため、単なる"ダメ部下"の羅列みたいになってしまって、事例集としては面白いのですが、対処方法が抽象レベル(啓蒙レベル)で止まっていたり、或いは、まさに対処療法的なものになってしまっている気がしました。
項目個々については、「ああ、こんな部下、いるいる」という感じで読んで、「ああ、そうやって対処すればいいのか」と納得する読者もいるかも知れませんが、個人的には、「上から目線部下」「社内恋愛中部下」とか「顧客奴隷部下」「独断専行部下」といったネーミングのインパクトが先に立ち、"読み物"的に面白く書かれている割には、肝心なことは頭にあまり残らない気がしました。
単に"ダメ部下"の「見本市」をやるつもりで書かれた本ではないと思うのですが、"ダメ部下"の描写に最もウェイトが置かれているために、結果としてそうなってしまっている?