【1238】 ○ リー・ミラー(写真)/リチャード・カルヴォコレッシ(文) 『 リー・ミラー写真集―いのちのポートレイ ト』 (2003/11 岩波書店) ★★★☆ (? ジャン・コクトー 「詩人の血」 (30年/仏) (1930/01 パリ公開) ★★★?)

「●写真集」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【875】 『アンリ・カルティエ=ブレッソン写真集成
「●か行外国映画の監督」の インデックッスへ 「○外国映画 【制作年順】」の インデックッスへ

"ヴォーグ"のトップ・モデルで、映画「詩人の血」にも主演した、才色兼備の写真家。

リー・ミラー写真集.jpg  Lee Miller.bmp Lee Miller (1907-1977)photo by Man Ray/Self-Portrait(下右)
(27.4 x 22.8 x 2.4 cm)『リー・ミラー写真集 -いのちのポートレイト-』 ['03年]

Lee Miller2.jpg モデルや女優から写真家になった人は多く、かのレニ・リーフェンシュタール(1902-2003)も元は女優であり、キャンディス・バーゲンも一時は写真家の方が本業だったし、日本でも元ミス・ユニバース日本代表の織作峰子や元モデルの桐島ローランド、男性まで含めると加納典明(俳優と兼業だった)もいて、最近では福山雅治、松田美由紀まで"参入"しているけれど、この辺りになると実力のほどはよく分からない...。

Man Ray and Lee Miller.jpg そうした中(と言っても、この中で比べて差し支えないにはレニぐらいだろうが)、このリー・ミラー(Lee Miller)は、モデルとしても写真家としても一流だったと言えるでしょう。

Man Ray and Lee Miller

 雑誌"ヴォーグ"のトップ・モデルだった22歳の時に写真家に転身、マン・レイに師事するとともに、マン・レイの以前の恋人だった"モンパルナスのキキ"から彼を奪って彼の愛人になってしまうのですが、初期の頃はファッション写真やポートレートを撮っていたのが、第二次世界大戦の戦場に赴いて戦場ジャーナリストになりました。

Lee Miller3.jpgLee Miller 1.jpg 戦場に向かう女性将校や戦場に斃れた兵士などを撮り、自決したナチの将校や頭髪を剃られたナチ協力者の女性、殴られて顔が変形したナチ収容所の元警備兵などの生々しい写真もありますが、ファッション写真を撮っていた頃に既にシューレアリストから強い影響を受けており(彼女はジャン・コクトー監督の「詩人の血」('30年/仏)に"生きた彫像"役で出ている。面白いけれど評価不能に近いシュールな映画だった)、そうした勇壮な、或いは悲惨な写真においても、その光と影の使い方にシュールな感覚が見られ、その覚めた意匠が、却って報道写真としての説得効果を増しているように思います。

Lee Miller in Hitler's bath.jpgLee Miller.jpg 戦後はポートレートに復帰し、長年親交のあった画家ピカソの日常の"素"の姿を写し撮っていて、そのくつろいだ様が興味深いですが、その他にも多くの芸術家や映画俳優の写真を残しています。
 しかし、一番美しく撮れているのが彼女自身のポートレートであり、この写真集の中でそれに匹敵する美人と言えば、彼女が撮ったマレーネ・デートリッヒぐらいでしょうか。
 この写真集を見ていると、ついミラー自身のセルフポートレートや撮影の合間に自分がモデルになって撮られた写真に目が行っていまいます。

Lee Miller in Hitler's bath (ヒトラーの浴室のミラー 1945.5.1)

 まさに才色兼備、生き方も奔放だったようで、彼女について書かれた伝記もあり彼女自身も文筆家でしたが、'60年代以降の活動がやや地味だったこともあり(自分の仕事をやり尽くしてしまった感じがした?)、20世紀の「伝説の写真家」と言っていい女性です。

詩人の血.jpg「詩人の血」(1930年).jpg詩人の血1.jpg 「詩人の血」●原題:LE SANG D'UN POETE●制作年:1930年●制作国:フランス●監督・脚本:ジャン・コクトー●製作:ド・ノアイユ伯爵●撮影:ジョルジュ・ペリナール●音楽:ジョルジュ・オーリック●時間:50分●出演:リー・ミラー/ポリーヌ・カルトン/オデット・タラザック/エンリケ・リベロ/ジャン・デボルド●パリ公開:1930/01(プレミア上映)●最初に観た場所:新宿アートビレッジ (79-03-02)(評価:★★★?)●併映:「忘れられた人々」(ルイス・ブニュエル)/「アンダルシアの犬」(ルイス・ブニュエル/サルバトーレ・ダリ)

About this Entry

This page contains a single entry by wada published on 2009年9月19日 00:09.

【1237】 ○ 宮腰 賢 『故事ことわざ辞典―現代に生きる』 (1883/01 旺文社) ★★★☆ was the previous entry in this blog.

【1239】 × 田沢 竜次 『東京名画座グラフィティ』 (2006/09 平凡社新書) ★★ is the next entry in this blog.

Find recent content on the main index or look in the archives to find all content.

Categories

Pages

Powered by Movable Type 6.1.1