【1006】 ◎ 河合 隼雄 『「子どもの目」からの発想 (2000/05 講談社+α文庫) 《 「うさぎ穴」からの発信―子どもとファンタジー』 (1990/11 マガジンハウス)》 ★★★★☆

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子どもの感性を自らの中に甦らせてくれるファンタジーを紹介。児童文学案内としても良い。

「子どもの目」からの発想.jpg 『「子どもの目」からの発想 (講談社プラスアルファ文庫)』['00年] 「うさぎ穴」からの発信.jpg 『「うさぎ穴」からの発信―子どもとファンタジー』 ['90年]

「うさぎ穴」からの発信 絵.jpg 河合隼雄(1928-2007)がファンタジー系を中心とする多くの児童文学の名作を紹介・解説したもので、『「うさぎ穴」からの発信-子どもとファンタジー』('90年/マガジンハウス)として刊行したものを、「講談社+α文庫」に収めるにあたり改題・再編集したものです。

 改題にあたり河合氏は、「なぜ『子どもの目』か?」ということについて、「それは人の『たましい』をしっかり見る力を持っているから」と言っていますが、確かに大人になり世事に感けているとその目は曇ってくるのかも知れず、子どもたちが持っている豊かな感性も、単に未熟であるというふうにしか見えなくなってくるのかも。

 氏に言わせれば、そうした子どもの感性を自らの中に甦らせてくれるのがファンタジーであり、ファンタジー系の児童文学を読むことは「子どもの目」の凄さを改めて教えてくれ、また、近年急増するいじめや心の病にどう対処するかということを考えるうえでの手がかりにもなると。

 何となく漠たる考えであるような印象も受けますが、紹介されている70作あまりの児童文学についての氏の的を絞った解説を読むと、たいへん説得力があり、本書は自分が児童文学に触れ直すキッカケとなりました。

 しっくりくる、或いは眼からウロコが落ちるような解説がされているものがいくつもあり、是非それらの作品を読んでみたいと思ったのですが、まだそのうちの半分も読めていません。
 ファンタジーを読むゆとりみたなものは、人生において大切なんだろうなあと思いつつも。

 巻末に紹介作品の一覧があり、読書案内としてよく纏まっている(勿論、ただ纏まっているだけでなく、内容も充実している)ので、いつも手元に置いてはいるのですが...。

 【1990年単行本〔マガジンハウス(『「うさぎ穴」からの発信-子どもとファンタジー』)〕/2000年文庫化[講談社+α文庫]】

《読書MEMO》
●ヘルトリング『ヒルベルという子がいた』(アフリカ体験)(19-31p)
●カニグズバーグ『ジョコンダ夫人の肖像』/●灰谷健次郎『兎の眼』(小谷先生・書くことの難しさ)/●ギャリコ『さすらいのジェニー』/●アトリー『時の旅人』
●リヒター『あのころはフリードリヒがいた』空襲下の防空壕に非難した人々は、ナチスの防空委員長にフリードリヒを中に入れることを拒否され、彼は死ぬ(74p)

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